第14話 デモ
大人たちの中で外を出歩いている数人を除いては、だんだんと心が壊れて行ったのだろうか。
数人の自殺者が出始めていた。
そんな中、その事件は起こった。
政府のお願いーー。
そのお願いに政府は責任を取らない。
外出禁止令ーーただ出歩くな。だけで何の保証もしない。
緊急事態宣言ーーただし保証はしません。
矛盾だけが繰り返されている。
それでも大人たちは政府に従い、矛盾さえ感じないかの様に引きこもっているのが分かる。
やはり大人たちも、答えを求めているのだろうか?
彼らはもう自ら考える事を放棄しているのかも知れない。
子供ながらに司はそう思った。
僕ら子供は、そんな大人の何を見て成長していけばいいのだろうか?
僕らの未来が、深い闇に包まれていくようなそんな気がした。
※挑戦状
デモ。
あたりは暗い夜だ。
大人たちは集まっていた。
ヒッソリと会議を交わしているようで、大人たちが集まっている部屋がどこなのかも、液晶越しだとわからない。
その部屋は電気すらつけられていない。
わずかな懐中電灯の明かりの中、司の父である晃が口を開いた。
「ーーこの国のこんな理不尽なやり方には納得行かないと思うんだが、同じ気持ちの人だけ立ってくれ!!」
突然、そう言い出したのは司の父ーー斎藤晃だった。
「ーーそうだな」
誰かがそれに賛同する。
その場にいるのは10数名くらいだろうか?しかし、そのほとんどの人が席を立った。
「そうだよな?国のやり方に納得できないのは、俺だけじゃないと思ってたんだ」
ふぅ。
晃にとって、その軽い呼吸こそ、覚悟を決めた瞬間だった。
「ーー俺ら全員で、この国と戦わないか?」
晃がそう言う。
ーー国と戦うって言ったって、、一体どーするんだよ?
誰かがそう呟いた。
「ーーどうするって簡単な事だよ。暴動を起こすんだ。いわゆるデモだ!」
ゴクリ。
誰かが生唾を飲み込む音が聞こえた。
「俺らは今政府の方針のおかげで、働けない。家から出るな。だけど噂じゃ警察や国の連中は今でも働いていて、普通に給料をもらってんだ。。俺らはいつクビになってもおかしくないーーそんな状態になってるのに、そんな事、許せるのか?」
晃が悔し涙を流す。
ーー許せるはずがない。
ーー絶対許せない。
この何日間か、家に閉じ込められただけで、既に発狂しそうだった。
俺らは我慢に我慢を重ねてきた。
たった数日。
金の有る無しに関わらず、国から家に軟禁され、その代償は何もない。
そう、これから起こることは国との戦い。
そして、国への挑戦状。
俺らは警察官に捕まるかも知れない。
だが、それでもやるしかない。大人として少しでも前に進む為にーー。
※デモ
その日から、大人たちは群れをなして、プラカードを抱えながら歩いていく。
「我々に自由をーー」
プラカードにはそんな台詞が記されている。
指示だけで保証も何もない国への抵抗。
この頃じゃ「緊急事態宣言」という言葉などが比較的容易く使われている。
それが国民にとってはどれだけのストレスになるのか。
ーー国を動かす立場の人たちは、何もわかっていない。
「我々、人間に自由をーー」
プラカードにそう示してある人もいる。
「自由を返せ!!」
そう記してある人もーー。
デモ活動をしていくうちに、晃はもっとすごい事がしたくなった。
デモーーこんなんじゃ生ぬるい。
政府の人間を殺すとか、脅迫するとかしないと伝わらないかも知れない。
晃の中にいる凶暴な晃が見え隠れする。
ーーそうだ。
国の中心に爆弾をーー。
晃はすごい妄想に入り込んでしまった。
行動し始めてわずか一日。
だんだんと人が増えていき、初めは十数人だったデモ活動の仲間もその倍以上の人数になっていった。
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