第13話 依然、行方不明
液晶に映る映像を囲むようにして子供たちは眺めている。
毎日毎日、親もいないし、危険にさらされている親の映像ばかりを見ていると、頭がおかしくなりそうだ。
どうしてこんな映像を見ないといけないのか。
不安しかない毎日が、だんだんイヤになってくる。
「あ、、俊哉くん、、コレ君のお母さんじゃない?」
司は一度しか見た事のない人だから、自信がなかったが、そう思って言ってみた。
俊哉がその映像をジックリ見ている。
「ーーそうだよ。これ、お母さんだよ」
俊哉も元気な声を出す。
ーーお母さん、どこに行くんだろう?
母の足はまた警察署に向かっていた。危険なライオンたちのいる場所を抜けてーー。
警察署に入ると俊哉の母は辺りを見回した。
「あのっ。すいませんーー」
細身の体つきをした女性の警察官に、俊哉の母が声をかけている。
「ーーどうしました?」
女性警察官が微笑んでいる。
こんな状況なのに、警察官たちは集まっている事に少し違和感を感じたのだろうか?
俊哉の母は首を傾げている。
「ーー俊哉が、、行方不明なんです。。もう4日目になります。。もう生きていないかも知れない。俊哉を探してください」
女性警察官がうろたえている。
「ーーお気持ちは分かります。ですが、村田さんのお宅だけではなくすべての子供たちが居なくなっているので、大丈夫ですよ!きっと無事です」
婦人警察官が言った。
「私、、私、、あの子がーー俊哉がいないと、、」
俊哉の母は婦人警察官の前で、大粒の涙を浮かべ泣いている。。
それを見ている俊哉も、少し寂しそうな顔をしている。
ーーもうちょっとだよ!!頑張ろう。
司は精一杯笑って、一緒に頑張ろうと手を差し出した。
「ーーそうだよね。後3日くらいだもんね」
ここの場所に来てから、出歩かないせいか、今が昼なのか、夜なのか。
それすらもわからない。
映像の中のウソも何度探して見つけられないままだ。
僕らはやはりまだ子供なのだろう。
一人では何も出来ない。
「ーー俊哉」
そう言って笑う母の声を聞いた気がした。
この時はまだ次に起こる事件の事など、子供たちの誰一人として知るヨシもない。
※食事
大人たちは数人だけ、チラホラと外に出てくるが、それ以外の人たちは家に引きこもったまま出てこない。
考えられない。
一日中何もせず、家の中にだけいて飽きないのだろうか?
食べる物もなく、買い物にも行かない。大人たちは痩せ細って餓死しまうんじゃないかと思うけど、大丈夫なのだろうか??
そんな事を考えていると、タケルの声がした。
「ーー食事ですよ」
ここではuiと呼ばれるロボットが、ご飯を買ってきてくれて、一人一人に配ってくれる。だから、僕らは食に困ることはない。おそらく痩せる事もないだろう。
今日のご飯はおにぎりと、出来あいで売ってるような天ぷらなどのオカズが添えられる。
サラダもつけてくれている。
僕にはあまりよくわからないが、おそらく健康のバランスも考えられているのだろう。
買ったものばかりだが、それでもおしゃべりしながら、みんなで食べるご飯は格別に美味しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます