第11話 実験三日目
始めの実験から、まだ3日程度だ。
その間にいろんな事が起きた気がする。動物たちの脱走や、子供たちの行方不明事件、そして新たなウイルスーー緊急事態宣言や、外出禁止令などその言葉にも飽き飽きしているのだろう。
街の中をチラホラと人が歩く姿が目につくようになってきた。
ーーお父さんは一体どこにいるんだろう??
液晶に写っている場所をすべてチェックしてみる。信じられない場所に父はいた。
ーーいた。
父はパチンコにいる。
店は開け放たれており、従業員は一人もいない。だが、電気は動いているようだ。。
父はその機械に一万円札を投入する。
母が入院しているのに、病院じゃなくてこんなとこにいるなんて。
大好きだった父。
でもこんな姿を見て僕は幻滅しか感じられなかった。母の病気の事よりも、パチンコなんてーー。
「ーーお父さん、、ねぇ、、お母さんの事はどうでもいいの??」
液晶に写る父に語りかけるが、もちろんその言葉に返事はない。
僕の家族は、これからどうなるのだろう。
※がん?
音声のない映像の中で、母は白衣をきた先生らしき男と話している。
タケルくんが気をきかせたのか?
音声を出してくれた。
「――ガンですね」
それが医者の発した言葉だった。
母は短く言う。
「あと、どれくらいですか?」
母は落ち着いた様子で、医者に聞く。
検査結果を見ながら医師は答える。
「――そうですねぇ、何もしなければ、もって後1年ですかね?」
「そうですか」
母は寂しそうにそういってうつむいた。
「実は何となくですがね、何となくそんな気がしてたんですーーでもね……それでも、実際に聞くと堪えるもんですね。もし、治療をしたらどれくらい命は延びますか?」
「成功率は五分五分です」
医者である小柄な男は言い切った。
「どうしますか?ーーこの事をご主人にも、、?」
医師は、母である彼女の意見を聞く。
「ーーいいえ。この事は言わないで下さい。その為に見舞いは来なくていい、と主人には伝えているんですから。」
母は気丈に振る舞っている。
お母さんの姿を見て、僕は無意識のうちに涙を流していた。
ーーお母さん……お母さん。
「ねぇタケルくん、、お母さんの病室の映像見せてよ!」
司は今にも殴りかかりそうな勢いでお願いした。
「ーーわかりました」
タケルがお腹のところから、パソコンを取り出し何かを入力すると、その映像がパッと出てくる。
ーーホントは不安なんだろう。
ーーホントは心細いだろう。
だが、母はそれを一人で抱え込む。
母の心情が手に取るように分かった。
母がガン?
ウソでしょ??
急に不安になった。
母に僕はもう一度会えるだろうか?
そうして深い不安の色を表すような夜が訪れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます