第10話 飼い犬、ハナとコージ
ーーあ、これ見て!!
子供の一人が言った。名前も知らないその子の向こうにある液晶に目を向ける。
ーーわぁ。
ーーカッコイイ。
オスのライオンだろう。
凛々しい顔つきで、遠吠えをしている。
ーーやっぱりカッコイイ。
ーーライオンっていいなぁ。強くてかっこよくて。
司は純粋に液晶の中にうつる、ライオンの姿がかっこよくて、思わず見とれていた。
すると、、子供たちが大騒ぎを始める。
「ーー何なに?どーしたの?」
司はよくわからないまま、その騒ぎを見ている。
「ーーライオンの映像じゃないよ。コアラのところを見てよ。」
ーーコアラ?
僕はコアラが映った映像を見る。
そこには司の父が立っていた。
「ーーお父さん?」
父はコアラを抱き締めている。
コアラも特に嫌がる素振りもなく、抱き抱えられていた。
ーーいいなぁ。コアラを抱っこしてて。
司は思った。
ツカサは動物たちが大好きだ。
家に帰れば犬が二匹待っている。
ふと、大事な事に気がついてしまった。
父はコアラを抱えてる。母は病室のベッドの上ーー父一人だと、チワワのハナとコージに、エサもあげてないんじゃないのだろうか?
ーーやばい。
「ねぇねぇ。タケルーーうちの家の中見えるかな?」
「ーー見えますよ」
タケルが犬たちのいる部屋を見せてくれる。
ーー良かった。
ちゃんとエサは入っていた。どうやらあの犬嫌いな父が、ハナとコージにエサをあげているようだ。
ーーエサ、食べてるみたい。
僕はようやく安心した。
ハナとコージも、見た感じは元気そうだ。
お留守番が腹正しいのか。
とにかく二匹で吠えまくっている。
ケージに入れないまま、父が出掛けたせいで、ティッシュなど噛みついて部屋を散らかしている。
壮絶な現場になっていた。
フローリングの床の上に、ティッシュは食いちぎられ、その辺に散らかされている。置き去りの段ボールは引きちぎられ、おまけにトイレの砂をばらまいている。
犬だから悪気はないのだろう。
ーーでも、お母さんが帰ってきた時にこんな部屋を見たら怒るだろう。
怒ると、本当に怖いんだよなぁ。
お母さんが怒ってる姿を思い出してツカサはゾッとした。
そして今は怒られない事が少しだけ寂しくも思える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます