第5話 街が動物園?

街がドウブツ園


ニュースでは、「街がドウブツ園になった?」と題され、報道されている。


政府が仕掛けている監視カメラの映像なのだろうか?

テレビ画面を通して、写っている街並み。


そのいたるところには、ライオンやゾウなど、動物園にいたはずの動物たちが横たわっていたり、吠えていたり。。


まさに日本がドウブツ園になってしまったような状態だ。

道のアチコチに、動物がたたずんでいる。


動物たちに占領されている街。

買い物すら行かない大人たち。

こんな風になった今、僕たちはどんな未来を思い描けばいいのだろうか?


「ーーミナサン、ダイジョウブデスカ?」


タケルが子供たちを励ますように言った。

いつもより、少しカタコトの言葉で。


※大人の強さ


仕掛けられたカメラの映像をコドモたちのいる部屋ではみるコトができる。それは常に最新のものだった。


「ーーちょっとこれみて!」


そう言ったのはツカサだ。


「ーーお父さん?」


そういった時、映像の向こうには、ポッチャリとした体型で黒ぶちメガネ。ガチャピンと呼ばれるほど、左右の目の位置がずれている。

そんな人物がうつっていた。


ツカサの反応からして、彼の父親なんだろう。


「ーーお父さんがこんな街を歩いてるよ?ドウブツたちに負けてないよ?」


ツカサの目が輝いている。

その目には、父に対するシンライを宿していた。


今、ドウブツたちは眠っている。

そんな中、父である晃が出歩いているのだ。


※ゾウの葬式


父は歩いていた。

動物たちが居座る街の中を一人で。


車一台も走っていない閑散とした街。誰にも会わない街ーーなんだか、とってもおかしくなってきた様だ。


父は突然、大声で笑いだす。


目的地はどこだろう?わからないが、父はとても楽しそうに見えた。


「お父さん、楽しそう」


司がぼやく様に言う。

しばらく父が歩いていくと、ゾウの群れにたどり着いた。

動物園でも、ここまでの数のゾウはいないだろう。

ゾウの群れーー。

ゾウたちが取り囲むようにしているその中心に目を向ける。


一匹、横たわるゾウがいた。

そのゾウはピクリとも動かない。


ーーお葬式、、だろうか?


取り囲むようにしているゾウたちが、長い鼻で草のようなものを乗せていく。。


中にはリンゴを乗せるゾウもいた。


これは人間で言うお葬式なんだろうか?

父の目には、少し涙が溢れている様に見えた。


ツカサはゾウの死に思わず涙がこぼれた。


動物園では見る事のないそんな瞬間だった。

ゾウにもお葬式の様な習性があるのだと、画面を通して司は思った。


やはり死と言うものは、ゾウたちはとても悲しいはずだ。

それなのにーー。

なぜか笑いが止まらねー!とでも言いたげに、父は大声を立て笑って、腹を抱えている。


「象がお葬式なんてしてんだもんなぁ。あはは。おっかしー」


腹を抱えて笑っている父。

その背中に迫ってくる足音。


ドシドシ。ドシドシ。


ゾウが父の背後に迫る。。


長い鼻を伸ばし、司の父のクビに巻き付ける。

ゾウが怒っているのは、間違いないだろう。


それもそのはず。

仲間が死んだのに、父が笑いだすから腹が立ったのだろう。

僕にはゾウのその気持ちがわかる気がした。

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