第3話 緊急事態宣言
※ツカサ、行方不明!
貴子はニュースを見ていて驚いた。
街中の子供たちが今、忽然と姿を消しているのだとニュースは報じている。
もしかしたら、ツカサもこの事件に巻き込まれているのかも知れない。
化粧もせず、貴子は警察署へと向かう。
その途中、携帯電話を耳に宛て夫である晃に連絡をする。
「――もしもし」
三度目のコールが終わるタイミングで晃が出た。
「――あなた、大変なのよ!ツカサが……ツカサが……!!」
貴子が泣き出す。
「おいおい、どうしたんだ?貴子……落ち着いて話してくれ!何があった?!」
困惑した声で、電話の向こうで晃が慌てふためいているのが、貴子には手に取るようにわかった。
「街中の子供たちが行方不明になっているんだって、そしてツカサもそれに巻き込まれているようなの」
貴子は仕事中の夫に配慮して、なるべく用件だけを完結に伝えたつもりだった。
しかし、実際には支離滅裂だったかも知れない。
それだけ、貴子にはショックが大きい事だった。
ツカサの行方不明はーー。
16時を回った頃、晃から電話があり、今日は早退させてもらったのだという。
貴子は警察署へ来ていることを告げ、そこで晃と合流することにした。
晃にとってのツカサの存在もまた大きなものである事を実感する。
※緊急事態
ーーキンキュウ事態。
その日。
夕方のニュースの途中、テレビ画面上部にテロップがながれた。
キンキュウ事態宣言、もしくは外出禁止令、発出か?
テロップが流れてすぐに、緊急特別番組が組まれていた。
「本日、全国で動物たちがにげだすという事件が発生しています。原因は調査中です」
キャスターは、神妙な顔でいう。
くりかえし、その事件をメディアは伝えた。
動物たちが逃げている原因は今のところわからないが、この事件ーー大人たちはどんなふうに対処していくのだろうか?
ーーそして、なぜ動物たちが逃げ出したのか?
謎は深まっていく。
動物園からは動物がいなくなり、街の中からは人が消え、動物たちがたわむれる。
そんなこと、ありえない。
あるはずがない。
ーーまさか、そんな。。
半信半疑。
おそらく大人たちが、そう思っているはずだ。
※ニュース
「ーータイヘンだよ!タイヘン!!」
ニュースをみながら、血相をかえたツカサがいう。
「ーーどうしたの?」
タケルがきく。
「ドウブツ園から、キョウボウなドウブツたちが逃げてきてるよ」
ーーダイジョウブです。
ーーアンシンして下さい。
「動物たちも、じき帰りますよ」
「ーーそうじゃなくて、ぼくたち食べられちゃうよ!ニンゲンを食べる動物もいるんでしょ?」
ツカサは不安そうだ。
「ーー肉食系のドウブツは、ニンゲンのことをたべますね」
正直にタケルがいう。
「怖くて、ぼく、、ぼく、、外にでられないよ」
ツカサはうつむいた。
逃げたドウブツから、イノチをまもるため、家からでないでください。。
メディアを通して、くりかえし外出禁止令がだされ、まずは身の安全を最優先にしてーー総理はそうくりかえした。
ニンゲンのすむ街に動物たちがあふれかえる。異常な風景が、今この街にはひろがっている。
不安にさらされながら、政府の要望にこたえるように、人々は家に引きこもり出歩く人はほぼゼロになった。
人びとはこの先、どうなるのだろう?
きっと人々は深い闇の中でおびえている。
※緊急事態宣言
食料もなく、買いにもいけない。
だが子供たちには、それがあった。
大人たちは動物が逃げ出したという、そのニュースをきき、大人達は大騒ぎしている。
毎日の様にくりかえされるニュースは、その緊急性を伝えた。
動物たちがのさぼる中、ぼくら子供がこれまで頼れると信じていた大人たちは、動物たちに屈し、一歩も外に出ない毎日を繰り返している。
動物たちは自由にこの街を歩き、まわりにある田んぼからは、食材を奪い食べ散らかしている。
(動物たちが)カワイイーー。
そんな風に思っていたのは、もしかしたら勘違いだったのかも知れない。
ニュースを見て、司は子供ながらにそう思った。
動きを制限されたまま、大人たちは静まり返り、誰もが仕事を無くし、働かなくなった。
実験だとしらないせいかも知れないが、ただ踊らされているようにしか見えない。
政府の要請は、バカの一つ覚えの様に「外出禁止令」の繰り返しばかりだった。
ただ一部の地域には「緊急事態宣言」が出されている。
動物たちが潜んでいそうな場所だけはーー。
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