『怒っちゃうよ』
読んでくださる前に。
今回は私の純粋な怒りが含まれており、もしかしたら不快に思われるかもしれません。ご了承下さい。
大学の研究室。私がここに来るのは半年前、卒業論文を提出した時以来だ。まだ卒業試験や国家試験まで時間の猶予はある程度あり、心にも余裕があった。それは同級生の誰もがそうだったと思う。
朝から夕方まで研究室で勉強し、家に帰って夜の11時までまた勉強する。半年前まではそうしていたが、友人たちとのある会話をきっかけに家で一人で勉強するようになった。
「楓はいいよね〜。元々頭良いから卒試も国試も余裕でしょー?」
「ほんとだよー。いつもテストの成績も良いし。3ヶ月くらい私達に勉強教えてよ!」
「余裕なんてことはないでしょ!受かるか不安で毎日必死だもん」
「楓がそんなこと言ってたら私達はどうなっちゃうの?みんな落ちるよー」
「そうそう。だから勉強教えて!人に教えるのって勉強になるっていうし、一石二鳥じゃん!」
この時はまだみんなもおちゃらけだったため、私も特に何も思わず流すように言葉を返した。しかし、この調子で勉強教えてと言われたりして自分の時間が減るのは避けたい。私は家での勉強に変えた。
そして今日、大学に用事があったのでついでに研究室で勉強していこうと顔を出した。
「楓ー!ほんとにやばいよ!ほんとに勉強教えて!!」
真っ先に言葉がやってきた。半年前に話したあの友人だ。彼女もたまたま今日来ていたみたいだ。私が何か答えようとしたが、それを遮るかのように矢継ぎ早に話を続けた。
「もう余裕でしょ?時間がないからほんとに教えて!卒試まで毎日2時間くらいでいいから!」
「い、いやでも私もそんなに」
「元々頭の良い人はいいよね。少しやればできるんだから。私はできないんだから少しくらい助けてくれてもいいでしょ?ねぇ?」
私が言い終わる前に言葉が返ってきた。全てを聞かなくても予想がついたのだろう。もしかしたら私の態度にも出ていたのかもしれない。嫌だなって。
「今日は少し用事があって大学に来ただけだし、やっぱりコロナもあるから家でやることにしてるから」
そう言って相手が何か言う前に私は急いで研究室から出て行った。抑えきれぬこの怒りは家に持ち帰った。
自分で言うのもなんだが、私は腹を立てることは滅多にない。大抵のことは上手く受け流すことができるし、腹立つことを言われたとしても私の沸点には届かない。
だが、今回は珍しく腹が立った。大袈裟に言えば怒りに身を震わせるほどだった。
元々頭が良いって何?
少しやればできるって?
私が余裕だって?
ふざけるな。あなた達は私の何を知ってるんだ。元々頭が良いなんてことはない。
毎日勉強してきたその積み重ねがあるだけ。
長い時間かけてやってきたからできるだけ。
今まで第一志望に合格したことがないからこそ、常に不安が付き纏う。余裕なんてない。
世の中には本当に天才と呼ばれる人もいるだろうし、少しやればできる人だっているのだろう。だが、そんな人たちも少なからずやることはやっているし、できるようになるだけの努力はしているはずだ。
私は頭が良くないから、時間がないから。そんなのが言い訳になると思うなよ。
頭が良くないと自覚しているなら、少しでも良くなるように勉強すればいい。すぐにできるようにならないと分かっているなら時間をかければいい。
時間がないから?時間はみんなに等しく流れているものだ。時間がないのは勉強以外にそれを費やした結果だろ。毎日2時間くらいでいいだって?その2時間の重みも分からない人に私の2時間を与えるなんて勿体ない。
あなたが合格できるかどうか不安でしょうがないのは伝わる。
だけど私もあなたと同じように不安に思っているんだ。
この怒りは抑える必要はないだろう。
だってあなた毎日彼氏と遊んでばかりじゃない。
※これは決して妬みによる怒りではありません。私にもパートナーがいます!!!
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