好き、憎い、好き、憎い、好き(1)


『橘先生……もう1人の魔法少女は申し訳ありませんが、旧校舎へ着く前に対処を先生にお任せします。代わりに桐村愛は私が倒します。頼みましたよ、先生。』



こっちの返答も待たずにそう言って電話が切られる。


そんなこと言われても………

私は一瞬弱気になる。



いやいや、メアリー・スーのためにも南原さんのためにも2人を合わせる訳には行かない、なのに担当教師の私が弱気になってどうすんだ!


頬っぺたを叩いて、気を入れ直す。



兎に角、まず牧さんへ電話しなきゃ。


「もしもし、牧さん?」


『はい、牧です。橘先生どうかしましたか?』


「説明は後でする!今すぐ急いで中庭に行って!で、そこを通って旧校舎に行こうとする魔法少女を止めて!私もすぐ行くから!」


『了解しました!』



早く私も中庭に行かないと。

そう思って扉前にバリケードみたく積まれた荷物をどかそうとするけど、南原さんの能力らしい糸のせいでどれもが固く絡まってて中々扉は見えてこない。


ああ、もう……早くしなきゃって時に。


これじゃ出る方法が……………いや、あるにはある。

ゆっくり振り向く。見えるのは開いた窓。


ここから飛び降りれば、部屋から出れる。

とはいっても……いくら2階だって飛び降りた時に着地をミスしたら……………


いや、考えてる暇なんかない。

ええい、ままよ!!


私は出来るだけ目を薄開きにして、窓からジャンプした。




ーーーーー〈牧side〉ーーーーー


急いで数学準備室から出て、中庭へ向かいます。


橘先生は魔法少女と言ってましたけど……あ、居た!



「ちょっと止まってください!」


私が、悲痛そうで、どこか怒ってるような顔をした高校生の前に立ちはだかると彼女はむっとしました。


「何ですか!急ぐから退いてください!!」


「出来ません、橘先生から止めてくれと頼まれてますから。」


そう言うと彼女は黙って右手をぎゅうっと握りしめます。


「うわっ!?」


瞬間に頭目掛けて飛んできたプランターを避けます。

やっぱり、この子で当たりみたいです。



「……また…別の………橘先……………許せ…い。あぁぁぁ!!」


彼女が何かをぶつぶつ呟いて、それから頭を掻きむしりながら怒りに任せて叫ぶと、腕から糸が何本も何本も伸び、置かれたベンチやプランターに中庭の花壇の岩などが集まり、糸で絡んでいきます。



【オォォォオ!!】


糸が絡められ、出来上がったのは3m近いゴーレム?みたいな操り人形でした。


マズイかもです……今までヴェイグリアでもこんなデカブツと戦ったことないのに…


いやいや弱気になっちゃ駄目だ、こんなんじゃいつまで経っても梔子先輩や杉崎先輩、絹川係長に追いつけません。



心を強く持って、深呼吸………

よし!行きます!


「朔月抜刀!」

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