ほんの少し勇気を持って

「ねぇ、鈴香さん。ちょっといいかな?」


「あなたは……南原 みちるさん。どうしました。何か生徒会に相談が?」


「いや………そうじゃ……なくて」


センセェのこと好きなの?どう思ってるの?


長くもないたった一言が、どうしてもあと一歩口から出てくれない。


「えっと………その……最近さ、鈴香さん。センセェとよく会ってるよね。」


「センセェ?ごめんなさい、誰のこと?」


「あっ、立花先生のことなんだけど。」


ここで勇気を持たなきゃ、後悔する。

聞かなきゃ、センセェとのこと。


「あの!センセェと鈴香さんとの間にさ、何かあるの?」


私の質問に鈴木さんは少し難しい顔をして、あるにはあります、そう答えた。


あぁ………私の何かがグラグラ揺れてる。

駄目だ…私の意識とは関係なく、涙が目の縁に溜まっていってる。


嫌だ、涙を見せたくない。

どうしてか分かんないけど、今鈴香さんの前で泣きたくない。

泣いたら、本当にセンセェへの恋心が砕け散っちゃいそうで、


「へ、ヘェ〜、そ、そうなんだ。あはは、忙しいのに引き止めちゃってごめんね。ありがとね、それじゃ!」


私は無理矢理に会話を終わらせて、急いで寮の自室に帰った。

布団に潜って、なんでもない、なんでもないそう思おうとしたって、どうしようもなく涙は止まってくれない。


なぁんだ、こんな簡単に恋って終わるんだ。



もう私の涙は枕をびしょびしょにしようとするまで止まりそうになかった。

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