生徒会長からの依頼

数学準備室へ入ると、牧さんと緑園寺さんの姿が見えたのでソファへ腰掛けようとしたところで、

ちょっと待ってくださいと牧さんに止められた。


「橘先生を呼んだのは、私じゃなく実は別の方なんです。だから、ここじゃなくてその人の所へ。」


別の人?誰だ?


牧さんに連れられ、私とメアリー・スー、緑園寺さんは数学準備室のある第二南館から渡り廊下で第一中央館に向かう。


こっちだと、職員室だし、誰か教師からだな。

そう思ったが違った。


「ここです!」


連れてこられたのは、職員室ではなく、高等部生徒会室だった。


ということは依頼者は……



「お待ちしてました、橘先生、牧先生。それに葦月と美菜さんも。」


年季の入った扉を開けて、高等部生徒会長の霰沢あられざわ 優星ゆうほが顔を出した。



ーーーーーーーーーー



「お忙しい中、来ていただいてありがとうございます、橘先生。」


目にかかりそうな長い茶髪をピンで上げて留め、すぐさま、霰沢さんは私たち4人の前にお茶を注ぎ、前に受け皿とともに出し、会長の席に着く。


「いや、気にしなくていいよ。それで、私たちを呼んだってことは」


「橘先生のお察しの通りです。魔法少女のことで一つ相談がありまして。ある男子生徒を探し出して欲しいんです。」


それから霰沢さんは相談事について話し出した。

要約すると、中等部の三山 駿という学生が1週間前に外泊届けを出したきり、失踪しているとのことだった。それについて中等部の生徒会長から泣きつかれたらしい。

誘拐ではと思ったが、そもそも三山という生徒自体がどこの出入り口にも写っていないそうだ。

つまり、学園内で姿を消した。

それで霰沢さんは魔法少女の仕業と考え、私たちに依頼をしてきたというわけのようだ。


「お願いできますか、橘先生。」


「うん。分かった。探してみるね。」


「私たちも微力ですが、探してみます。」


「会長さん、すぐに見つけますから、安心してください。」


「葦月と美菜さんもありがとう。頼りにしてるね。それじゃあ、また何か新しい情報があったり、見つかれば知らせに行きますね。」


「分かった。期待はそんなせず待ってて。」


深々お辞儀する霰沢さんにそう言って部屋を後にする。


しかし、今度は失踪事件かぁ。

あぁ、今回も骨折れそうだなぁ………はぁ。







ーーーーーーーーーー


「橘先生らとのお話はもう終わりでええんですか、カイチョーさん?」


クローゼット部分からにゅっと潜んでいた溝呂木が霰沢に向かって顔を向ける。


「うん、もう出てきていいよ。」


「はぁ、狭っ苦しくしゅうて肩凝ってまいましたわぁ。悪友のカイチョーさんの頼みやなかったらしてませんでしたで。ほんま、感謝してやぁ。」


「あはは、ごめんごめん、紙織。さてと、じゃ、面倒な仕事は橘先生たちにパスしたし、私たちは私たちのことをしようか。」


クローゼットから出てきた溝呂木に、悪びれる様子なく手刀を軽く切って、霰沢は机の1番下の引き出しから、30個ほどビー玉の入った、駄菓子屋で見かける地球瓶を取り出した。

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