恋に盲信、首ったけ

秘密の恋心


「セーンセェっ、ここ座ってもいい?」


「あ、南原さん。いいよ。」


いつも通り端っこのほうのテーブルで、1番安いワカメ蕎麦を食べていた橘センセェの隣に、トレーを置く。


横に座ると少し心臓がドキドキする。

頬っぺた……赤くなってないよね。


「センセェ、本当にワカメ蕎麦好きだね。」


声が上擦らないよう、気を付けながら適当な雑談をセンセェに振る。


「好きっていうか、懐具合だよ。あとは蕎麦って疲れて食欲無さげな時でも食べやすいから。」


「疲れてるって………やっぱり魔法少女のことで?」


「あはは……まぁね。」


魔法少女のこと………夜の寮での噂は知ってるし、同じクラスにも魔法少女の友達が居るから、知らない訳じゃない。


でも、私は魔法少女じゃないし、夜の寮での噂の解決の糸口を知ってる訳でもない。


だから………少し、話を共有できる鈴香さんや緑園寺さんが羨ましく感じる。



あーあ、好きって言えたらなぁ。

たったの2文字だけどどうしても口に出せない。

もし………もし、断られたら、私はきっともうセンセェの横に座れる自信が無い。




そんな私の不安を煽るように、鈴香さんがコチラのテーブルへ歩いてきた。


「橘先生、牧さんが至急数学準備室へ来て欲しいと。」


「あー、分かった。これ食べ終わったらすぐ行くね。」


「分かりました。それなら、ここで待ってます。」


鈴香さんのセリフにセンセェは笑う、といっても苦笑いだけど。


最近妙に鈴香さんとセンセェが近く感じる。急接近してる。

実際、一緒にいる所もよく見かけるし。


もし、鈴香さんが恋のライバルになったら、きっと私は勝てっこない。



はーぁ、私に勇気があったらなぁ。

もっと鈴香さんみたいに文武両道で、綺麗な人だったらなぁ。



そしたら、きっと、告白なんてとっくの前に出来てるのに。


私はいつの間にかセンセェから離れるように、肩を窄めていた。

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