電圧計が5階から落ちてきた
「では通り魔の特徴を教えてください。」
「そうは言ってもなぁ、顔は見えなかったし。橘ちゃん……橘先生は何か見た?」
「えっと……見間違いかもしれないけど、左手に何か傷があった気がします。」
「……………左手に傷……そうですか。ありがとうございます。」
まず警察、続いて魔法少女課の梔子さんと杉崎さんへ通り魔についての事情を話していく。
とは言っても殆ど何もないので、両方ともすぐに話は終わった。
「……もしかすると通り魔は2人を狙ってくるかもしれません。気を付けてください、橘さんも遠野さんも。」
帰ろうとした直前、梔子さんが抑揚の無い声で私たちへ呟く。
分かりました、そう簡単に返したが、私にしろ睦さんにしろ、この時はそこまで梔子さんの忠告に気を留めていなかった。
ーーーーーーーーーー
「先生、少し質問いいですか?」
また大学の方で新しい魔法少女の話が出たため、その生徒のゼミ担当の教授へ資料を貰いに行こうと中庭を通っていると、高等部の子に話しかけられた。
えっと、見覚えあるけど誰だっけな。肩までの茶髪にそばかす………ああ、そうだ。夏木 真里亞さんだっけ?
この子は確か山本先生が担当してるクラスだったな。
山本先生が奥さんのためにと産休で半年ほど休んでいた頃、そっちのクラスを任された時に、授業内容だけじゃなく、自分で買った問題集とかでも熱心に質問に来てた子だった。
「いいよ、どこの質問?」
「えっと……ここの微積で面積を求める問題なんですけど」
「あぁ、これね」
熱心さに感心しつつ質問に答えていると、突然、頭上がバキバキと凍り付いた。
「え、何事?」
少し離れて上を見ると、電圧計が頭の上に落下して凍っていた。
「え?え?な、何ですかこれ?」
急なことに驚き、慌てふためく夏木さん。
「夏木さんは今すぐ校舎に戻って!」
「は、はい!」
夏木さんが校舎へ戻っていくのを見送り、改めて凍った電圧計を見る。
確か、この上の5階は基礎工学部の永井ゼミがあった筈だ。
そこなら電圧計の一つや二つあるだろう。
ただ、問題は電圧計が外へ落ちるような場所に置かれているのかだ。
教授へ書類を貰いに行ったついでに、落ちたと思われる5階の基礎工学科永井ゼミを覗く。
鍵を開け、部屋へ入る。
電圧計は鍵の掛かった棚の中に綺麗に仕舞われていて、その一つが無くなっている。
そして、窓は一つも空いていない。
というか、ここの窓はほんの少ししか開かないらしい。開けてみたが、電圧計が通るのもまず無理そうだ。
つまるところ、事故で電圧計が落ちることは無いと………。
知らずのうちに鼓動が早くなる。
取り敢えず、睦さんへ電話をかけた。
どうやら魔法少女の通り魔はこの学園内に潜んでいるらしい。
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