ストーリーテラー

ハエトリグサが本を食らい口を開けると、ゴゴゴと地響きがし、地面が揺れる。

落ちる本たちや倒れる本棚。

立っていられず、地面へしゃがみ込む。


「今食わせた本は巨大地震を描いた本でしてなぁ。ほらほら、もっと揺れまっせ!頭上に気ぃつけなさりや、お二人さん。」


ぐわんぐわんと揺れが更に激しくなる。

牧さんはどうにか、ものを避けながら、溝呂木へ近づこうとするけど、運動神経の良くない私は立っていられず、地面へ寝そべるようにして必死に揺れへ耐える。

そんな私に3階から本棚の一つが落ちてきたが、氷によりブロックが発動し間一発助かった。


ビビったぁ……私の能力自動発動で良かったとつくづく思う。

これで自分での発動も出来れば完璧なのになぁ……


「溝呂木さん、観念してください!」


私がそんなことしてる間に、なんとか牧さんが溝呂木の前まで辿り着いたらしい。


「おぉ!すごいですねぇ、牧さん。でもウチはまだ観念なんかしたありませんわ。地震は軽傷で済んだみたいやけど……ほんならこれはどうどす?」


いつの間にかもう一冊食ってたらしく、溝呂木さんの前でハエトリグサが口を開ける。


「な、竜巻っ!!がふっ!?うぎっ!!」


瞬間、巨大な竜巻が発生し、崩れて散乱した本や本棚がボールのように飛んでいく。

牧さんも咄嗟のことにガード出来ず、横から飛んだ本棚にぶつかり、弾き飛ばされ、更に別方向からの本棚が彼女の右足を強く押し潰した。


「牧さん!」


「大丈夫です!ただ、右足は折れたみたいで……」


そんな!

しかし、牧さんの右足が折れようが竜巻と本棚やテーブルたちの猛攻は止まらないどころか、激しさを増していく。

牧さんを守らなければ。

強い竜巻に足を持ってかれそうになりながらも、牧さんの所へ駆けつける。

取り敢えず、これで飛んでくる本棚たちの脅威は去ったけど………竜巻の猛烈な勢いで近づきようが無い。

くそっ、あの猫野郎め。


「へぇ……橘先生も魔法少女で、そんな能力なんどすねぇ。ほんなら、竜巻はもうええわ。さてさて、次のはすごいですよ。出てくるのは5つ首のオオトカゲ……ほら、壮観な光景お楽しみくださいな。」


溝呂木は私の能力を見ると竜巻を止め、今度は化け物の登場をニタニタ予告する。

マズイ!私の能力は自動発動だけだし、いくら牧さんでも右足の折れた状態でそんな化け物と対峙するのは難しい筈だ。



本をポンと上に投げる。

本が食われるのを止めなければ。

届くかホントにギリギリな距離だ、無理くさい。それでも兎に角私は走る。


それを分かっている溝呂木は私を見てニタニタ笑い、ワザとハエトリグサを伸ばさず、落ちてるくところに口を開いた。


必死に手を伸ばす。クソっ、後ちょっと距離が足りず、本に手が届かない。


「さぁ、世にも恐ろしい怪物をご覧あれ!」


勝ちを確信した溝呂木は腕を広げ、勝ち誇ったように演技くさく大きな声を上げる。


万策尽きた。

本が口に落ちる、そう思った瞬間、本を凄まじい勢いで飛んできた矢が本を貫き、メモをピンで止めるみたく深々と矢で本が本棚へ留められた。


更にもう一発、椅子に座る溝呂木本人へ矢が飛び、溝呂木は椅子から飛び退く。

瞬間、ハエトリグサたちが溝呂木のコスチュームにシュルシュルと収まっていく。


「すみません、遅くなりました。橘先生。」


声が聞こえた3階のバルコニーを溝呂木が睨む。


「なんや、特別ゲストなんてウチ許可しとらんぞ!緑園寺、鈴香!」


そこに立っていたのは変身した魔法少女二人。美菜さんと、仰々しい弓を構えた鈴香さんだった。

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