謎の空き巣
「それじゃあ明日からよろしくお願いします。学園の入場許可証は明日の朝渡しますので、9時ごろにお越しください。」
「は、はい!よろしくお願いします!」
牧さんには明日から来てもらうよう伝え、魔法少女課を後にする。
「さてと、鈴香さん、美菜さん、戻りましょう。」
「はい。」
「分かりました。」
結局のところ、調査の助けはお願いできることになったけど、収穫はゼロだ。
調査はまだまだ終わりそうにない。
ということはつまり、残業は多くなるわけで。
はぁ〜、草津か、別府にでも温泉旅行行きたいなぁ。
ーーーーーーーーーー
一晩経って今は朝の8時50分。
また、あのノッカーアッパーが魔法少女を増やしたかもと考えると憂鬱だ。
火曜日は一限目、二限目と授業を持ってないから、牧さんが来るのを待ちつつ、もう一度魔法少女になった生徒たちの名簿に目を通す。
多いなぁ。でも、私的には何人か名乗り出てない面倒な生徒がいるんじゃないかなと思ってる。
まぁ、杞憂ならいいけど。
そんなことを考えていると9時にかけておいた携帯のアラームが鳴った。
とりあえず、牧さん用のネームプレートを持って、正門へ向かう。
お、いたいた。
「牧さん、おはようございます。」
「橘先生、おはようございます!」
張り切っているのか、大きな声で90度近く頭を下げて挨拶する。
そんな仰々しくしなくても……
まぁ、いいや。牧さんにネームプレートを渡す。
「牧さん、これネームプレートです。一応、時期外れの教育実習生ということになってますので、基本は私と一緒に行動してください。」
「は、はい!」
ネームプレートを渡し終え、取り敢えず数学準備室へ行く。
入ると、部屋には2人、中等部と高等部の先生が居て、牧さんは肩身が狭そうにかしこまっている。
「牧さん、そんな肩に力を入れなくても大丈夫ですよ。他の先生方には牧さんのこと、もう伝えてありますから。」
私がそう言うと、先生二人がペコリと軽く牧さんへ会釈した。
「ありがとうございます。」
少しは気が休まったようだが、依然として牧さんはまだ肩に力が入っているようだ。
生真面目すぎてるというか、何というか、そう言った性格なんだろう。
牧さんに座ってもらい、取り敢えずパソコンにまとめた、生徒から聞き取りしたノッカーアッパーの話を見てもらっていると、ノックがなされた。
「すみません、生活指導の森です。橘先生、いらっしゃいますか。」
どうやら、私に用事らしい。
牧さんに少し出ますと声をかけ、戸を開ける。
「森先生。どうかしましたか?」
「ええとですね、昨日から寮での空き巣が十件ほど起きてまして………生活指導の方でも犯人を探したんですが検討もつかずでして、それで」
「魔法少女が関わってるかもと……」
「はい。橘先生と牧さんの方でも少し調べていただけると……」
「分かりました。取り敢えず空き巣のあった部屋を教えてもらってもいいですか。」
内心、仕事が増えたことに溜息をつきながら、森先生から空き巣の件の話を聞いた。
ーーーーーーーーーー
「空き巣なぁ……ホントに魔法少女関わってんの?」
私と牧さんは盗みのあったという寮の一室へ訪れてみたわけだけど……
荒らされた跡があるし、普通に手癖の悪い生徒じゃないの、これ。
私らでずっぱってくる必要ある、これ?
そんなことを私が思っている一方、牧さんはやけに熱心に部屋を見回している。
「何か分かりました?」
「はい。これ、魔法少女の仕業です。」
「えっ?牧さん、分かるの。」
「私は魔法少女の使った能力の残滓が見えるんです。この部屋には………何か細長い、例えば触手みたいなのが部屋を荒らしたような痕跡がありますね。」
すごい、ちょっと頼らないかなと思ってたけど大間違いだ。
新人とはいえ、流石は魔法少女課って感じだ。
それから、他の部屋も見てみたが一様に触手のような能力の残滓が見えたらしい。
「これで犯人が分かりましたね。」
「いや……無理です。」
「えっ?どうしてですか。」
「今まで把握している魔法少女になった生徒で………そんな能力を持つ魔法少女は居ないんですよ。」
嫌な予感が当たってしまった。
どうやら、報告を避けた魔法少女がいるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます