仕事は増えるよ、どんどんと

「状況は分かりました………橘先生。」


どうするか悩んだ挙句、私は学長へ報告する事にした。


「あの……どうしましょうか?」


「生徒、並びに橘先生が魔法少女になった件………この件に関しては調べる必要があります。」


「そうですね。」


学長の言葉に頷くと腕にバインダーや資料を乗せられた。


「それでは調査、お願いしますね。」


「へぇ?」


「ノッカーアッパーと出逢った教師……そう、橘先生、あなた以上に適任はいない……そうでしょ?」


あぁ、今日もまた残業日和になりそうだ。


ーーーーーーーーーー


「うーん、調べるって言ってもどーするかなぁ」


休み時間、次の教室へ歩きながら、学長から任されたノッカーアッパーの調査をどうするか考えるが何も浮かばない。


「橘セーンセェ!難しい顔してどーしたの?」


「ああ、南原さん。まぁちょっぴし仕事が立て込んでてね。」


生徒の南原 みちるさんに声をかけられた。

そんなに難しい顔してただろうか?


「もしかしてぇ、最近寮で噂のこと?」


「あ、そっか。南原さんも寮生だっけ?……何か知ってる?」


「ごめーん、私もセンセェの助けになりたいけど何も知らないんだよねぇ。」


まぁ、仕方ない。

いくら寮生だからって知らないものは知らないよ。


「あ、そーだ。センセェさっ、美菜さんは?2組の。あの人って確か前から魔法少女でしょ、頼りになるんじゃない?」


おおっ、確かに!

緑園寺さんは件の噂が広がる前から魔法少女だ。

それにお姉さんも魔法少女だった筈だし。


「南原さん、ナイスアイデア!」


「あ、うん。どういたしまして。」


感動して手を握ると、南原さんは一部を編み込んだ長い茶髪で顔を隠すように恥じらって顔を下に背ける。


「センセェの助けになれたなら良かった。じゃあ、私、次移動教室だから。センセェも頑張ってね!」


「うん、ありがとうね。」


手を振る南原さんに手を振りかえし、二組の緑園寺 美菜さんのことをメモした。


ーーーーーーーーーー


放課後になった。

善は急げだ。早速、美菜さんへ会いに行こう。

とろとろしてると残業時間増えちゃうしね。

そう思い、数学準備室から出ようとした時、丁度扉が開いた。


「橘先生。」


「あー、ごめん。今から用事が」


「魔法少女のことで。担当でいらっしゃいましたよね。」


そう言って、私の前に手が差し出され、ぴゅーっと風が踊る。


「もしかして、君も」


「はい。」


声の主を見る。

端正とした中性的な顔立ちに、キリッとした眉と目、肩ぐらいまでの黒髪天然パーマ……間違いようがない。

学園一の才女、現生徒会副会長の鈴香 葦月いつきだった。


「先生………この事態の説明……していただけますよね。」


あー、何でこうも仕事が増えるかなぁ………

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