魔法少女が1人、魔法少女が2人、魔法少女が3人………

夢か現か

「うーん、目薬でも持ってくれば良かったなぁ。はぁ。」


凝った肩を回し、またパソコンに向かう。

時刻はもう22時半を回っている。


職員室は21時までに出て、帰宅するようにという一応のルールがあるのだが、何分期日がキツイもんでして、家に持ち帰ってするのが不得手な私はこうして1人寂しく残って仕事をしている。



はぁ、これもぜんぶ魔法少女のせいだ。

うちの学校は3年前に寮長だった向井 雛って学生が文化祭で暴れたのを機に、魔法少女への生徒指導が仕事として増やされた。

で、まぁ、今年は私が担当になったわけだが………

何故かここ最近、突然魔法少女になる生徒が増えているのだ。

何と1週間で50人も。

つまり仕事量がどかっと増えたわけで……はぁ、およよと泣きたいよ。


「あ〜、眠っむ。ガムでも買ってくればよかったなぁ。」


魔法少女になった生徒たちの担任なり、ゼミの教授なりが聴いた話のメモの内容をパソコンへ移していく。

あー、かったるいったらありゃしない。




打ち込んでいくうち、ある事に気付いた。


翠蘭学園うちは中・高・大とあって、大学は関東の名門大学『SUMMER』の一つに数えられる名門だけあってなのか、どうなのか知らないけども、遠方からわざわざうちへ来る生徒も多い。

だから中・高生寮と大学生寮、それぞれ男女ずつの計4個あるのだが、魔法少女になっているのは寮生だけなのだ。


それと、どの生徒にも共通しているのが、夜更けに起きて変な人物と話してたら魔法少女になってたって言う経緯についての話。


「ノッカーアッパーだか何だか知らないけど、私の仕事増やしてんじゃないっての、ボケナス!」


「おやおや、それは失礼しました。橘先生」


コーヒーを一気に飲み干し、仕事量激増の原因たる謎の人物ノッカーアッパーに対して文句を言うと、後ろから声が聞こえた。


慌てて振り返る。後ろの人物は女で、茶色いフードを被ってて、それで突然不意に現れる。


ちょっと待てって、こいつがノッカーアッパー?

てか、何で私の名前知ってんのよ。

えぇぇ、怖ぁ。


「誰だか知らないけどさ、魔法少女を増やすのやめてほしいんだけど。」


「それは聞けない相談ですよ、橘先生。」


私の言葉に右手の人差し指をゆっくり左右に動かして拒否を伝えてくる。


なんか、鬱陶しいなぁ。演技くさいってゆうか。


「心惜しいですが、談笑もここまでです。橘先生、次に目覚めると貴女は魔法少女になっていますよ、ほら。」


なに馬鹿なこと言ってんの、そう目の前のフード女に言おうとしたけど耐えがたい眠気に誘われるがまま、私は机に突っ伏して寝てしまった。


ーーーーーーーーーー


「はっ!今何時、今何時!………うっそ、朝の6時……」


最悪だ、どうやら寝てしまったらしい。

魔法少女関係の仕事をしていたからか変な夢も見るし、最悪だ。


「取り敢えず、トイレで顔でも洗お………うおっ!?」


教室から出ようとした私は、寝ぼけていたからつまづいて棚へぶつかる。

その衝撃で棚の上に置かれていた、昔の生徒名簿が入った段ボールを落としてしまった。

頭上へ名簿の山が降ってくる。

ヤバっ、そう思ってすぐさま頭を手で覆ったが何一つとして私の頭には落下してこない。


一体、何が……そう思って上を見てみれば、私を守るように頭上から1mの辺りで棚や段ボールごと名簿が凍って宙に浮いていた。


「は、な、なにこれ?」


困惑した次の瞬間、昨日の夢が思い出された。


『橘先生、次に目覚めると貴女は魔法少女になっていますよ、ほら。』



「昨日のって、夢じゃなくてマジ……?」

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