逢魔時
威勢のいいことを言った割に、7人で一斉に仕掛ける攻撃はどれも簡単にいなされ、当たっても明らかに大したダメージを与えるのに至っていないのは明らかだった。
「いやぉ、皆の技は壮観だね……なんか、私も技出してみたいなぁ。」
「ちょけてんじゃないわよ!……アンタら、全員で攻撃ぶち当ててやりなさい!」
山井さんの怒声とともに、悠々と立つ浪埜さんへ総攻撃を仕掛ける。
しかし、全員の攻撃が自分目掛けて飛んでくるというのに浪埜さんは目を瞑って頭を悩ませ、パッと何か閃いたのか目を開いた。
「お、そうだ。こんなのいいかも………『
そう唱え、浪埜さんが力強く右手をこちらに向けて開いた瞬間、山井さんの電撃や柊さんの黒い霧、前野さんの超音波などの攻撃は全て消し飛び、その直後周りに居たボクら全員は簡単にぶっ飛ばされ、周囲の建物の一部へ一気にビビが入り、脆く崩れていく。
気付いた時には、ボクは街路樹下の茂みへ突っ込んでいた。
そこで漸く何が起こったのか理解できた。
なんて事はない、浪埜さんは自分の力を全方位に一気に大量に放出したのだ。
本来は技なんて呼べるものじゃない……ただ浪埜さんの化け物じみた力の奔流はただそれだけで必殺技と呼べるだけのパワーがあった。
「流石に漫画みたいにビルがスパッと切れたりしないかぁ。あーあ、残念。」
全員を一撃でのした浪埜さんは自分の技が思ったより威力の無いことにガッカリして、はぁと溜め息を吐いた。
無茶苦茶だ……………やること、考えてること、傍若無人、正しく【魔王】に相応しい振る舞いかもしれない。
「じゃあ次はもっと出力あげてみよっかな……『逢魔時』!!」
威力が増した2度目の逢魔時の発動。
道路のアスファルトはえぐれ、街路樹や標識などを根こそぎ吹き飛ばし、周囲の高架や建物を球形に削り取る。
まるで今丁度台風か地震でも来た後のように辺りは一瞬にしてめちゃくちゃになった。
力の差は歴然だ。
それでも取り敢えず、再度魔王へ挑むべく立ち上がる。
全身が軋むように痛い。
寝てられるなら、今すぐベッドで寝てたい。
「あててて、痛いですね。」
「真白さぁん………まだいけそうなの私ら3人だけみたいですね。」
霧を杖のように突いて立ち上がった柊さんが周りを見渡して、不満げに呟く。
確かに、ボク、杉崎さん、柊さん以外はもうダウンしてしまっていて立ち上がるのは厳しそうだ。
「おー、全員倒しちゃったかもと思ったけど元気そうで良かった。こっちはまだまだ戦い足りないからさ」
浪埜さんは首を回し、柔軟のために手をぶらぶらさせて一度大きく深呼吸をすると、ボク達へ襲いかかった。
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