魔王の遊戯
ーーーーー〈立科side〉ーーーーー
「はぁぁ……はぁぁ………」
「へぇぇ、知らなかったな………立科ちゃんの念動力ってこんな感じなんだね。」
息切れしているのが自分でも分かります。
私としたことが、これでは講義どころではありません。
「くっ!!」
苦し紛れに念動力で自転車や鉄パイプ、看板と周囲にあるものを飛ばします。
「いやぁ、これじゃああの娘たちが負けるのも納得だね。」
しかし、そんなものは浪埜さんへ通用しません。
飛んでくるものを平然と避けながら、追尾の力をかけた二つのガラス片をパッといとも容易くキャッチしてしまいました。
浪埜さん………彼女は魔法少女ではありません。だから、攻撃の仕方なんて基本も出来ておらず、いえ、だからこそ型破りなそのケンカの如き戦い方を恐ろしいほどの力でする、それは私にとって脅威であり、私をじわじわと追い詰めていきます。
「あれ、もう講義は終了?」
「そんなわけないでしょうっ!………っああぁ!!」
挑発的な浪埜さんの台詞に、私は念動力でものを飛ばしながら、やけくそ気味に鉄パイプで殴りかかりました。
が、そんなものは通じず。
「立科さんも、そんな感じでクールじゃなくなるんだね。」
浪埜さんはそう軽口にしながら、私にボディブローをくらわせました。
瞬時に襲う嘔吐感。それに耐え、すぐに次の手を出そうとする私を浪埜さんの拳が左から横なぎにしました。
最早、勝負は決しました。
完全に私は立てません。腕が痺れるように震えるだけで何度立とうとしようと足は動かず………
「これで終わりかなぁ。」
私を見上げる浪埜さんが腕をゆっくり持ち上げ、振り下ろしました。
キュッと目を瞑りましたが、一向として腕が私に落ちることはありません。
「っと!食後の運動にしてはちょっとハードそうかもですねっ!」
拳は黒髪ショートの女子高生の出す黒い霧で押し止められていました。
「……………大丈夫?」
「梔子さん………ありがとうございます……1つ借りが出来ましたね。」
「………じゃあ、その貸しで講義免除してよ。」
「……それは出来かねます。」
「あ、そう。相変わらずだね。」
傷だらけの私を安全な壁際までおぶった梔子さんは、私の返答に感情の乏しい態度で淡々と答えます。
梔子さんらしい………ただ、その時の素っ気なさが私には心強く感じました。
ーーーーーーーーーー
「いやぁ、今日は本当に付いてるね。目当ての相手と連続して会えるなんて。………にしても、柊さんそっち側なんだね。
「別にどっちもこっちも、私、別に魔法少女に対して敵とか味方とか関係無いですし。ただ私はスリルが欲しいだけなんで………で、あなたとの戦闘はバッチバッチにスリル満点そうですから。」
「成る程ねぇ。まっ、いいや。戦う理由は人それぞれだし。じゃあ……良い戦い見せてよ」
浪埜さんは本当に嬉しそうに笑うと、そのままボク目掛けて拳を放つ。それを両手のガードで受け止める。なんて馬鹿力だ。
そのまま膠着状態になった隙に柊さんが霧を斧状に形を変え、浪埜さんへ振るう。
それと同時に杉崎さんがボクが拳で押される背後からスッと飛び出し、浪埜さんの脇腹目掛けて蹴りを入れた。
浪埜さんは脇腹に蹴りをくらいながら特に動じず、左手で霧の斧を鷲掴みし、そのまま斧ごと柊さんをぶんと振り回し、ボクと杉崎さんにぶつける。
すんでの所で柊さんの霧がボク達にも伸び、直撃を避け、そのまま柊さんの霧に押し出してもらい、勢いよく水平に飛んで殴るも、片手でそれを真正面から手で受け止められ、かえってボクが投げ飛ばされる。
「いやぁ、やっぱり良いねぇ。強い相手と戦うのはさ。」
数にも勝るこっちの全力を平然と1人で受け流す浪埜さん。
食後に偶然、立科さんを蹂躙する姿を見かけてやって来たけど、やっぱり山井さんの電話通り帰っといた方が良かったなぁ。
さて、どう攻撃しようか………そう考えていた時、噂をすればと言わんばかりに、視界の端から山井さんが飛び出してきた。
「浪埜ー!」
「おっ、まだ動けんだね!」
電撃が顔面目掛けて放たれるも、それを片手で握り潰し、山井さんを蹴り飛ばす。
「っかは!………次っ!」
「うお、五月蝿っ。」
地面に打ちつけられた山井さんに代わるように超音波が飛び、浪埜さんが耳を塞いだ瞬間に吉永さんの高速の斬撃が何発も飛んだ。
「お、吉永ちゃんと前野ちゃんも来てるんだね。」
着ていたスーツに切り傷がつくが、本人は虫に噛まれた程度のダメージしか受けた様子は無い。
「はぁ、やっぱし聞いてないじゃないですか、山井さん。」
「うっさい!兎にも角にも攻撃するのが大事なのよ!」
「まぁまぁ、2人ともさぁ。言いあってる場合じゃないでしょ!」
どうやら山井さん、相澤さん、吉永さん、前野さんがきてくれたらしい。
「確かにそうね。よし、アンタら、魔王気取りのあの馬鹿をぶっ飛ばすわよ!」
「………うん。」
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