魔王降臨


「どうだ、体の調子は?」


「普通、むしろちょっといいぐらい。」


「それなら良い。…………そういえば、ヒイラギ ミチカに会ったんだって?どうだった?」


「強かったよ。そりゃあかなりね。」


「そうか……だが君は今からそんな彼女を越えた力を手に入れるんだ。今やってる最終調整が終わればすぐにね。」


「楽しみだね。」


女と話しながら、メーレヒュケッヘは実験器具を弄り、最後の調整を終えると、満足そうに笑みを浮かべ、パチンと指を鳴らした。


「ふふ、完璧だ。完璧な強さ、素晴らしい!【ジェミュラセル=クーレティロス】、そう名付けよう!」


「それ、どういう意味なの。」


「そうだな……破滅をもたらす者……こちらの言葉で有り体に言うなら『魔王』だな。」


ピッタリだろ、そうニヤリと笑うメーレヒュケッヘ。

その後ろで女は大きく右腕を振りかぶり、彼の頭に勢いよく振り落とした。


メーレヒュケッヘは周りに置かれた実験器具ごと地面に叩きつけられ、後頭部から血を流しながら、か細く呻く。


「おー、感度良好。期待以上だね。」


女は今し方殴り飛ばした相手のことなど気にも留めず、グーパーと手を動かし、その感触に嬉しそうに笑みを浮かべる。


「な、なぜ………」


虫の息のメーレヒュケッヘが女へ何故自分を殴ったのか、息も絶え絶えになりながら問うと、


「だってさ……私、魔王だよ?」


女はさも当然という風にそう呟いた。


「な……な………」


「じゃ、私は行くから。いやぁ〜、ありがとね!」


女は地面に突っ伏すメーレヒュケッヘに顔を近づけて礼を言うや否や、2m以上あるメーレヒュケッヘを片手で持ち上げ、乱雑に放り投げた。

大きな呻き声が聞こえ、それなり物音一つ無くなり静かになる。


「風の夜に〜馬をかり〜かけりゆくものあり〜♪」


女は上機嫌に歌を口ずさみながら、メーレヒュケッヘのラボを後にした。


ーーーーーーーーーー


「さてと………この力を使ってみたいけど……お、いいたちはっけーん。」


女は街をぶらついていた山井と相澤を見つけると、スタスタ近づいていく。


「おーい、お暇?」


「はぁ?急に何なの?」


「あ、そう言えば樋口さんが連絡欲しがってましたよ。」


「あー、それならもういいんだよね。」


「?……アンタ、魔法少女課辞めたの?」


「うーん、まぁそんなとこかなぁ。今日から魔法少女課の浪埜じゃなくて、の浪埜になったからさ。」


「はぁ?……アンタ、何言ってっ!?」


そう愉快そうにいうや否や、女ー浪埜ーは澱んだオーラを出し、山井へパンチを繰り出した。


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