嵐の前の静けさ
「……………梔子です。」
「あ、真白さん!お見舞い来てくれたんだね。」
「あら、梔子さん。」
杉崎さんから勧められ、絹川さんのお見舞いに行くと、樋口さんに会った。
「………具合は?」
「大丈夫!魔法少女は頑丈だからね。あと3日もすれば退院できるって。」
「……なら、良かった。樋口さんも付き添ってるみたいだし、早いけどそれじゃあ。」
「ありがとねー。」
「そうだ、梔子さん。もし、先輩……浪埜のこと見たら私か課に連絡ちょうだい。少し前から行方が分からなくて……」
「分かりました。」
ーーーーーーーーーー
「あ、真っ白さん。どうも!」
病院から帰る途中、突然声をかけられた。
声のした方を見ると、見覚えのある黒髪ショートの女子高生………
「どうも、柊です。真っ白さん。」
ボクに声をかけたのは、柊さんだった。
「………真白だよ。」
「そうでした、ごめんなさい。」
駆け寄ってきたので名前の間違いを訂正すると、柊さんはペコっと頭を下げた。
「………戦いにきたの?」
「いや、今日はたまたま見かけて声をかけただけですよ。あ、そうだ!真白さん、お昼まだですよね、ファミレス行きませんか?」
戦いにきたわけじゃないとはいえ、面倒くさいなぁ。
断りたい。
本心ではそうだけど、柊さんの霞みのない澄んだ目で見られると、断るに断りにくい。
なくなくボクがオッケーすると、やった、と柊さんは高校生にしては少しテンション高めに喜んだ。
ーーーーーーーーーー
「注文どうぞー」
「えぇっと、野菜のハンバーグと、このドリア。それとあとこのピザを!」
「……ボクはこのペペロンチーノを一つ。」
「注文承りましたー」
夏休みとはいえ、まだ11時前のファミレスには人も疎らだ。
「………よく食べるね。」
「よく言われますよ、細いのに大食漢だねって。」
確かに柊さんは細い。とても頼んだ量の3分の1も入らなそうに見える。
「あ、そうだ。ここってキッズメニューの間違い探しが難しいらしいんですよ。折角だし、やりません?」
「………苦手だけど、まぁいいよ。」
それから2人でじっとキッズメニューを眺める。
何というか、大学生と高校生が子供用の間違い探しに熱心になるというのも変な感じだ。
「あ、ありましたよ。これで折り返しですね。」
「…………え、どこ?」
「ほら、ここですって。」
「………………ある?」
柊さんが見つけたらしい五個目の間違いを目を凝らして探していると電話がかかってきた。
げ………山井さんからだ。
「親御さんとかですか?」
「いや………鬼から。」
「ははは、何ですかそれ。」
軽口を叩きつつ、電話に出る。
「……もしもし」
『出るの……ぜぇ……ぜぇ………遅いわよ!』
「どうしたんです?」
『襲われたのよ、魔王なんて自称したあの女に!……アンタ、魔法少女狩りとヒイラギ?ってヤツと一緒に探されてるみたいだから!もし、外だったらさっさと帰んなさい!……ぜぇ………ぜぇ………………伝えたからね!』
言い切るなり、電話を切られた。
「何だったんです?」
「………魔王がボクたち探してるって。」
「ははは、何ですかそれ。」
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