魔王
憧れ
「おんどりゃぁ!」
巨大な鎌を前のヴェイグリアへ突き立て、そのまま振り向き様に重い拳を背後にいた奴の顔面へ叩き込んだ。
「ふぃー、疲れた……………ねぇ、ずっと熱い視線を向けてきてたけどさぁ、もしかしてアタシに惚れちゃった?」
今し方、ヴェイグリアの群れを難なく倒し終えたモノクローム調のドレスに、白と黒の薔薇飾りを付けた魔法少女が、目の前で繰り広げられた戦いから目を離せなくなっていた私に向かって悪戯な笑みを浮かべる。
「………惚れちゃったかも。」
「えっ、マジ?」
「マジかも。」
これが私と第一世代最強の魔法少女、【薔薇の魔法少女】竜胆 真紀奈との出逢い。
それに、きっと……私が"力"に魅入られ、憧れるようになった瞬間だ。
ーーーーーーーーーー
【薔薇の魔法少女】こと竜胆真紀奈は幸いなことに同じ高校で、私とマキナはよくつるむようになった。
「そーいや、また魔法少女になりたいって子にあったよ。髪が真っ白だった。」
紙パックのリンゴジュースを吸いながら、私というより宙に向けて呟く。
「どーせ、魔法少女の夢を壊すようなこと言ったんでしょ?まったく、なりたいって娘にはそう思わせてあげればいいのに。」
「あははっ。でもさ、実際のところ魔法少女なんてならなくていいよ。面倒くさいだけ。」
「そーいうもんなの?」
「そーいうもんだよ。世知辛いけどね。」
マキナには魔法少女になりたがる娘に魔法少女の夢を捨てさせるようなことをする悪癖があった。
どうしてこんなことをするのか、私には少しも理解出来ないが、マキナにも思うところがあるのだろう。
ーーーーーーーーーー
「え、魔法少女止める!?」
3年に上がり、追い込み時期の夏休みになった頃、突然マキナはそう言い出した。
「うん。もう飽きたしね。」
「え、じゃあ進路どうすんの?てっきり魔法少女関係の方に進むのかと思ってた……」
「いやぁ、親から地元に戻ってこないかって誘われてさ、地元の鳥取でのんびり大学に通うってのもアリだなって思って。」
「へぇ……そーなんだ………」
私は持っていた魔法少女関係の仕事のパンフレットをマキナに見えないようにクシャクシャに握りしめた。
ーーーーーーーーーー
マキナがどうしてそんなに強い力を簡単に放りだせるのか、意味が分からなかった。
それから、私は彼女に対して失望し続けた。
別に絶交したわけでもない。いままで通りにずっとつるんでたし、卒業してこっちから鳥取へ戻る時はホームまで見送った。
でも、常に彼女に、そして【薔薇の魔法少女】に対して失望していた。
どうしてこんな感情を抱いているのか、自分なりに考えた時にようやく気付いた。
私は
そうだ、私は"力"そのものに憧れていたのだ。
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