未知の花(2)

息を乱し、足が痺れ、今にも脱力しそうな絹川さん。

それに対して、大きくダメージは受けてるものの柊さんはまだまだ余力がありそうに見える。


現状は明らかに絹川さんが劣勢だ。


「助けに入ったほうがいいですね。」


「………うん」


ボク達は助けに入ろうと、絹川さんへ近寄って彼女を起こそうと手を伸ばすと、絹川さんは自力で立ち上がり、手を払った。


「………真白さん、聖䜌さん……手出しは無用だよ…!………これは私と未知花ちゃんの勝負だから!」


息を整え直すと、絹川さんは魔力を放出し、そのスピードを利用して柊さんへ突進した。


ナイフや拳での攻撃が来ると思っていたらしい柊さんは、そのままタックルという絹川さんの行動を予想できず、そのままぶつかられ泥水へ体を叩きつけられる。


「まだまだ……これからですよっ!」


しかし、柊さんも全く引かず、絹川さんのコスチュームの胸元に施されたリボンを引っ張り、ヘッドバットを繰り出した。


「う………ぐぅ……」


痛い一発に昏倒しかける絹川さん。

続け様に柊さんの霧を纏わせた掌底が絹川さんの胸を襲う。

バタン、音を立てて絹川さんが倒れ伏した。


「効いたでしょ………いやー、スゴいスリルでしたよっ!?」


そんな彼女の顔を覗き込むように立ち上がった柊さんを下から突き上げるような蹴りがかすめた。


蹴ったのは絹川さんだった。

絹川さんはモビールみたくふらふら揺れながら立ち上がる。


「ははははは、本当タフ。そのちっさな体のどこにパワーあるんですか!すっごいですよ!」


立ち上がった絹川さんを見て、笑う柊さん。

それに対して反応は無い。

何故なら絹川さんに意識が殆どないからだ。

魔法少女としての強すぎる執念がそうさせるのだろう。

これなら、東さんが時間遅延をかけたのにも納得が行く。

ハッキリ言って異常、その一言に尽きる。



「行きますよ……絹川さぁん!」


ふらつきながらもナイフを構える絹川さんへ、柊さんが近付き、霧を鉄槌のように変え、振り下ろそうとした刹那、刀が霧を止めた。


「勝負はここまでよ。」


どうやら、今し方駆けつけた樋口さんが仲裁に入ったらしい。



「はぁ、大人センセーが出てきたら喧嘩はおしまいですね。楽しかったですよ、すっごく。それじゃあさようなら。梔子さん、予定があったら戦いましょうね。」


樋口さんを見ると、柊さんは黒い霧を霧散させ、全身の傷を感じさせずトコトコ歩いてどこかへ消えた。


……この戦い見た後に戦うだなんて、そんなのゴメンだ。

絶対に面倒くさすぎる。



「大丈夫!?」


「はい…………何とか……」


意識を取り戻したらしい絹川さんが、樋口さんの問いかけに力無く応える。


「無茶しすぎですよ、絹川さん。」


「………頑張りすぎ。」


「かもだね………未知花ちゃん……強かったなぁ」


ボクらの言葉に絹川さんはボソッと小さく悔しさを滲ませた。



ーーーーー〈?side〉ーーーーー


「いやぁ……良いもの見れたね…………はぁぁ………やっぱり強いっていいなぁ。」


近くのビルの屋上から眺めていたこれまでの戦いに思いを馳せ、感嘆していると、それに水を差すように電話が鳴った。


あぁ、またか。もう20回以上電話を拒否してるのに何度もかけてきて……まったくいい迷惑だ。


「もう五月蝿いなぁ、この際だし捨てよっかな……ういしょっと。」


携帯を地面へ落とし、そのまま踏んだ。

ちょっと勿体無く感じたけど、まぁいいや。

もう、折り返すこともないしね。

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