喧嘩は(文化)祭の花(2)

ーーーーー〈茉莉side〉ーーーーー


2階に上がった後、追ってくる斧の魔法少女を撒いた私たちは、向井の目を見ないで攻撃する、つまり背後を取るため、居る場所を探していると、突然向井から電話がかかってきた。


『もっしもーし、今どこにいんの?』


「何のつもり……!」


『まぁ、落ち着きなって。アンタにあたしの場所を教えてあげようと思ってさぁ。』


一体何を狙ってるの………

分からないけど、動かないほうがいい……そう思い、足を止めて向井の言葉を聞く。


『曲がり角の先にいるよ。丁度、目の前で舞台用のバカデカい姿見を運んでる。アンタも見えてるでしょ。そろそろ曲がり角ね。』


目の前には確かに大きな姿見を運ぶ演劇部員が前を通っている。

なら、向井は目の前に………でも、どうしてそんな近くにいることを電話でバラして……


私の疑問は部員が曲がり角を曲がろうと鏡を弧を描くように少しづつ斜めにしながら曲がり始めたことですぐに分かった。


『あ、気付いた。バーカ、遅かったね』



しまった………鏡には角の向こうにいる向井が嫌味な笑顔を浮かべて電話する姿が写る。目を閉じようしたがもう遅かった。

反射した目と視線が合ってしまった……


次の瞬間、視界がぐにゃりと歪み、色もおかしくなる。


最悪だ……………幻覚をかけられた、私も。それに梔子さんも。


「見つけたよ、梔子 真白!」


マズイ……斧の魔法少女に見つかった。

視覚も聴覚もどうにもならないけど、とにかく攻撃に備えようと三人に分身する。


「きゃはは、挟み撃ちよ。これで終わりね。」


おそらく曲がり角を曲がり、向井がナイフを持って飛び出してきてる筈だ。

しかし、視界は以前、訳の分からない歪んだ映像が写るだけで向井の姿は見えない。


万事休すか……


「茉莉さん、斜め左に避けて、左上に剣を振り上げて」


「っ!?」


言われた通り、斜め左に避け、左上に剣をふるうとガチャンと幻聴の中で大きく何かぶつかった音が聞こえ、剣を握る手に力がかかる。


もしかして、斧を止めてる?


まさか……梔子さん、攻撃が見えてるの?

視覚も聴覚も効かないこの状況で……


ーーーーー〈梔子side〉ーーーーー


視界がぐにゃぐにゃ歪んで、よく分からないものが目に写る。

どうやら、ボクと茉莉さんは向井さんの幻覚能力にかかったらしい。


しかも面倒くさいことに、中根さんと向井さんに囲まれることになった。


どうしようか………取り敢えずはと見てみることにした。


ーー向井 雛ーーーーー1月前に魔法少女になりーーー


逆に反対の方を見れば、同じように中根さんの方も見えた。


幻覚自体はあっても、見えてることに変わりはないからか、ボクの能力は普通に反応するらしい。


正直言って、上手くいくか分かんないけど、やって見るしかないかぁ……


能力をオンにしたまま、辺りを見回す。

茉莉さんの左から中根さんが、斜め右に向井さんの情報が見えた。


「茉莉さん、斜め左に避けて、左上に剣を振り上げて」


言ってみると、ガキンと硬いもの同士がぶつかり合う音がした。

あぁ、何となく上手くいったらしい。


これなら、まぁ案外戦えそうかな。



ーーーーー〈向井side〉ーーーーー


「おらぁ!」


ナイフを思い切り横に振るう。


「分身2で左横をガード」


ガチャン、剣とナイフがぶつかった。


クソ……まただ、またガードされた。

何がどうなってんだ!


コイツら二人とも目がうまく働いてないのに……!!



ナイフと剣の鍔迫り合いになるなか、中根の方を見ると、斧を避けられ、梔子に顎にアッパーを決められた。

中根はその一発で完全にグロッキーになり、ぶっ倒れる。


クソ!クソ!


何がどうなってんだ!


「うぐっ!!」


中根の方に気を取られた瞬間、警戒していなかったもう一体の分身の蹴りを腹のど真ん中にくらった。

地面に転がされ、倒れる。


しまった……今のダメージでアイツらの幻覚が……


「幻覚が解けた……こうなればこっちのものね。」


アイツがあたしを睨む。

クソ!クソ!……ふざけんじゃねぇ………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る