乱入者
「おい、魔法少女狩り!梔子 真白はアタシが倒す。アンタは引っ込んどけ!」
戻ってきた中根さんが立科さんを指差して、向こうへ行くようジェスチャーすると、僅かに顔を不機嫌そうに歪める。
「魔法少女狩り、などと呼ばれるのは不本意です。ですのでその名で呼ぶのはよしていただけるとありがたいです。
それに……中根 紗夜さん、梔子 真白さん、貴女がたお二人には講義を受けていただかなければなりません。ですから引っ込むことには同意しかねます。」
あー、面倒臭い。
ーーーーー〈茉莉side〉ーーーーー
くっ、どうすれば……
「あらら、お仲間はもう居ないの?」
「……っ!…向井……!」
前方のひょっとこ面の魔法少女と向かい合っていると、後ろから余裕そうな態度で向井が歩いてくる。
「香中!やりなさい!」
香中へ攻撃するよう言うと、向井は私の方へナイフを構え、勢いよく襲いかかる。
「甘いわよ!」
私はすぐさま、分身の能力を使い、背後へ自分の分身を出現させ、ナイフを剣で受け止めるとともに、左から伸びてきた壁をよける。
「甘いのはアンタよ。」
向井は鍔迫り合いをしながらニヤリと笑い、目をキッと大きく開いた。
黒の瞳の中に虹色が時折り浮かぶ。
マズイ……!この目、これで幻覚を…!
私の瞳の視線が向井の瞳と合おうとしたその瞬間、向井が何かに当たって体が横に少し逸れた。
私はすぐさま鍔迫り合いの状態を止め、顔を離す。
「チッ………何なのよ……魔法少女狩り!?」
向井にぶつかったのは横の教室から飛び出してきた、いや吹っ飛ばされた【魔法少女狩り】の立科 花だった。
「!……これは失礼しました。なにぶん、二人同時の講義で辺りの確認を怠っていました…からっ!」
魔法少女狩りはスッと立ち上がり、私と向井にぶつかったことを謝罪しながら、飛びかかってきたもう一人の魔法少女の斧を横にあった机で受け止める。
一体何がどうなってるの?
私は混乱してしまって、固まってしまう。
それは向井も同じようで、突然の戦闘、そして【魔法少女狩り】という存在の登場にポカンとしていた。
「ほら、こっち。逃げるよ。」
「えっ?…あ、ええ。」
膠着していた私は梔子さんに手を引っ張られたことで、ハッとして膠着状態が解け、二人で二階へ上がる階段の方へ走る。
「梔子!待ちなさい、アンタ、勝負の途中でしょ!」
「講義は終わっていませんよ、中根 紗夜さん。」
私たちが逃げるのを察知した、斧を持った魔法少女が突っ込んでこようとするも、魔法少女狩りがそれを止める。
どうしてか分からないけど、今がチャンスだ。とにかく一度上へ逃げないと。
しかし、向井がそれをそのまま指を咥えて見ているわけもない。
「香中!逃すな!」
「ちょっと、ちょっと、無茶振り多いですよッと!」
さっき見た時のように壁や床がタイルの目状に光り始める。
お面の魔法少女の攻撃が来る!
私は身構えたが、空間が伸びてくることなく光りが消えていた。
一体何が、そう思って振り返ろうとすると手をぐっとひかれた。
きっと、振り向かずに先ず上へ上がろうという梔子さんの意思表示だ。
私はそれに従い、振り返らず階段を上った。
ーーーーー〈杉崎side〉ーーーーー
「へぶっ!……痛ったぁ〜。えぇ、ちょっとさっきまで気絶してたじゃないですか。なんでそんな平気なんですかぁ?」
私の顔面パンチが効いたようでお面を頭の上にかけて、腫れた頬を優しくさすりながら立ち上がる香中さん。
その顔は私が傷一つなくピンピンしているのを不思議で仕方ないといった様子です。
「何故か、ですか。それはですね、私の能力が自己再生だからですよ。」
「えー、そんなの反則じゃないですかぁ。」
彼女の疑問へ私が返答すると、香中さんは苦いものを食べた時のような、嫌そうな顔をして溜め息を吐きました。
「香中、ソイツは後回しにしなさい!先に緑園寺たちよ!」
「はいよ〜。はぁ、オーバーワークだなぁ。」
別の階段から2階へ上がろうとしているのか、渡り廊下で今いる本館へ繋がった東館に行った向井さんから呼ばれ、そちらへ向かおうとする香中さん。
「おら、アンタはどいてなっての!」
「お待ちください、まだ授業は終わっていません。」
一方、反対では中根さんがあの子を私の方へ蹴飛ばし、鍔迫り合いを終わらすと踵を返して梔子さんたちの方へ駆けてゆき、あの子がそれを追おうとしています。
この時、梔子さんと茉莉さんのために私がすべきことと言えばまぁ一つでしょう。
「うえっ!?ちょ、離してくださいってば。」
「杉崎 聖䜌さん、講義の妨げはおやめ下さい。」
「どっちの願いも聞き入れられませんね。」
二人の襟を掴み、校庭へ投げ飛ばします。
「二時間後に体育館で見たい演劇部の発表があるんです。悪いんですが、それまで私の暇つぶし相手になって貰いますよ。」
さてと、足止め頑張りましょうか。
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