あるいはラクガキと幽霊と魔法少女でいっぱいの街
「こっちが先よ。」
「いやいや、この幽霊の方が最優先ですよ。」
2人が言い合うのを尻目にボクはクラゲみたく浮かぶハエ頭の人型ヴェイグリアを見た。
ーーー常にある一点や人間の周囲を浮かんでいるのみで無害ーー攻撃を受けると増殖するーーーーー攻撃能力は無しーーーものがぶつかる等で移動させることが可能でーー
本当に幽霊みたいな存在だ。
変な生き物だなぁ、そんな視線をハエ男に向けると、ハエ男はそうですと頷くようにガクガク頭を揺すった。
「よっと。あ、ヤマイちゃん!みんな!」
声がする方を見れば、はぐれていた相澤さんがラクガキから飛び出してきた。
「相澤!アンタ、ラクガキ野郎は?」
「ああ、あのフードの子?一回会ったけど、それ以降は見てないよ。」
「チッ!ほんとに腹立つわね、アイツ」
山井さんはイライラが我慢できなかったのか、ハエ男を蹴る。
そうすると、さも当然のようにハエ男はぬるっと1匹増えた。
「ああ!?何なのよ、コイツ!ふらふら、ふらふらと…キッショいわね!」
増えて自分の周りをふらふら浮かぶハエ男に山井さんはキレて、ハエ男を殴り、また増えた1匹に集られて更にキレる。
イライラの永久機関だ。
「梔子さん、このラクガキどう対処します?」
周りの喧騒なんて無いのかというぐらい、全く周りに気を留めず、マイペースに話しかけてくる杉崎さんに促されるようにラクガキを見る。
ーラクガキーー魔法少女の松本
「そうだな、ボクならあのヴェイグリアを使うかな。」
吉永さんと前野さんの周りでぷかぷか浮かぶハエ男を指差すと、杉崎さんは微笑む。
「対処法を思いついたんですね。流石、梔子さん。」
「………どうも。あぁ、そうだ。杉崎さんに連絡とって欲しい相手がいるんだけど」
ーーーーー〈松本side〉ーーーーー
「見つけたわ、ラクガキ野郎!」
へへ、また懲りずにやってきたよ。
嗚〜呼、何人連れてきたって意味ないのにさ。
この、音色様の能力で負けることなんてないんだからさぁ。
「さっきの魔法少女じゃん。また無駄なことしにきたの?ずいぶん暇なんだね」
「うっさいわよ!」
無駄だってば。
飛んできた電撃をすぐにラクガキに引っ込んで避ける。
また顔を出すと、電撃の魔法少女はイライラして舌打ちしてる。へへ、いい様だね。
もっとおちょくって怒らしてやろ。
しつこいなぁ……もう30分経ってんのに。
「早く諦めなってば。」
「ざけんじゃないわ。誰が諦めるってのよ!」
また電撃。無駄だって分かってんでしょ。
体を引っ込め、別のラクガキに入ろうとした時、急に入らずに私の体がつっかえた。
「誰か通ってんのか。」
仕方ない。別のラクガキに入ろうとするとまた移動が出来ない。
これも、これも……駄目だ、もう20個近く通過中で入れない。
ちょっとちょっと……どうなってんの………
ーーーーーーーーーー
「今頃、ラクガキ通れなくて慌ててるでしょうね。ザマァみなさい。」
山井さんが悪そうに笑う。
「それにしても、あのヴェイグリアをラクガキ前に相澤さんの氷で障害物を作ることで、押しとどめてラクガキ内を浮かばせて常に通過状態にさせるとは考えましたね。やっぱりこのグループを組んで良かったです。」
「はぁ?そんなワケないでしょ。」
杉崎さんはラクガキ前に置いた氷の障害物を手で撫でながら、嬉しそうにボクらに言うと、そのセリフに山井さんは苦い顔をする。
「ねぇ、梔子先輩。私たちで倒さなくてよかったんですか、このラクガキの魔法少女。」
「大丈夫。適任の人を呼んでおいたから」
そうですか、ボクの返答に吉永さんはつまらなそうに呟いた。
ーーーーー〈松本side〉ーーーーー
どんどんラクガキが通らなくなってくる。
クソ、なんなんだよ!
あった!やっと、通れる。
通った先は高架下の駐車場だった。
他にここに飛んでこれるラクガキは無い。
すぐにラクガキを消す。
へへ、これでアイツらはもう来れない。
私の逃げ切り勝ちだ!
「松本音色さんですね。」
「っ!?誰だ、お前!」
後ろから声をかけられて振り向くとメガネをかけた女子高生が立ってた。
「単刀直入に申し上げさせてもらいます。松本音色さん、貴女の魔法少女としての在り方は芳しくありません。ですので、今から魔法少女の在り方を講義させていただきます。」
嘘だろ………このセリフ……魔法少女狩りの………立科…花……
「それでは講義を始めましょう。」
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