【山井視点】怪しいラクガキ(2)

「ういしょっと」


おそらく元凶らしいデカいラクガキに飛び込んでみれば、先程まで居た裏道から瞬間的に薄暗い路地に立っていた。

………ラクガキが違うし、似通ってるけど別の場所ね。


「転移系の能力かしら?……!!」


ヴェイグリアなり魔法少女なりが居ないか辺りを見回してれば、いきなりアタシの頭めがけて何かが振り下ろされる。

それをギリギリでよけ、反撃にすぐさま後ろを殴ってやるけど、生憎アタシの拳は空を切った。

チッ、かわされたわね。


「へぇ、よくよけたね。」


金髪のフード女は金属バットをブンブン振りながら、ケラケラ笑う。

嫌な奴……腹立ってきたわ。


「アンタ、魔法少女?」


「そうだよ。私、魔法少女なの。だからさぁ、大人しく私に財布くんない?魔法少女とケンカなんかしたくないっしょ?」


なるほどね、この魔法少女ラクガキ野郎はせこせこ追い剥ぎして小遣い稼ぎしてるってわけか。

はぁ、三流ね。


「渡すわけないでしょ、舐めんじゃないわよ!」


アタシが溜めてた電撃を放ってやれば、ラクガキ野郎はギョッとしながら、すぐに真横のラクガキへ逃げ込む。


「嘘っしょ、魔法少女なの!?」


別のラクガキから出てきたラクガキ野郎はアタシが魔法少女と思ってなかったらしく、ビビったような顔をしている。


「そうよ。魔法少女に喧嘩売るなんてバカね。」


「ちょ、ちょっとごめんてば。見逃してよ、同じ魔法少女じゃん?」


見逃す?

ホントにバカね、コイツ。


「許すわけないでしょ、アンタ、このアタシに喧嘩売ったんだから。」


「ひっ!?」


さっきのナンパ男にしてやったように体からバチバチ放電してやると、フード女の顔はビビって青ざめる。


「ひぇぇ!」


「逃がさないわよ!」


ラクガキ野郎がしっぽ巻いてラクガキに消えていくのをアタシは追いかける。

今更、縮こまっても遅いのよ。アタシに喧嘩売ったこと後悔さしたげるわ。


ーーーーーーーーーー


「はぁ………はぁ………クソっ!」


「さっきまでの威勢はどおしたの?」


「黙んなさい!」


ラクガキからひょこっと顔を出して煽るラクガキ野郎に電撃を放つけど、あとちょっとのところでラクガキに逃げ込まれる。


さっきからこれの繰り返しだ。

どのラクガキがどれに通じているのか知らないせいでムカつくことに翻弄されっぱなし、圧倒的に不利な鬼ごっこだ。

イライラしてしょうがない。


「へへ、恐るるに足らずだねぇ。」


「はぁ!?アンタ、舐めてんじゃ」


「ばぁ〜か!バイバイ。」


しょうもない煽りに頭に血が上ったせいで傍のラクガキから飛び出してきた手に気づかず、アタシは後ろにあったラクガキへ押し込まれる。


「クソっ!」


ラクガキに飲み込まれながら電撃を放ったけどあと一歩届かず、ラクガキ野郎のニヤケ顔を見ながらアタシの視界は一瞬暗転し、飛び出せば今まで居た薄暗い路地裏とは縁遠い、どこか知らないT字路に飛ばされていた。


「くっそ…コケにしてくれんじゃない!あ、」


あー、腹立つ!

ムカつくけどこのままじゃあのラクガキ野郎に攻撃を当てられない。

イライラしながらどうしようか考えていると、目の前に梔子と杉崎が居た。


梔子………ナイスタイミングじゃない!梔子の能力ならアイツのラクガキを看破できる。


「丁度よかったわ。アンタら、この舐めたヤツ倒すの手伝いなさいよ。」


アタシはあのラクガキ野郎の吠え面を想像しながら梔子の腕を掴んだ。

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