忙しくなる日常(2)

「まっ、取り敢えずお試しで2週間頼むね。それじゃあ私は仕事があるからこれで。バイバイ。」


否定意見で荒れそうな話合いは、浪埜さんの口八丁であれやあれやとそんな意見を挟む間も無く話が進み、いつの間にかグループを組むことが決まっていた。


「あー……やっぱり、あの人苦手です。」


「同感ね。」


テーブルに脱力してだらんと突っ伏した吉永さんの言葉に山井さんが頷く。


「はぁ〜あ、ヤダヤダ。組むなんて面倒くさくないですか?イヤホンさんもそう思うでしょ?」


ぶーぶー文句を垂れながら吉永さんが乱暴に話をボクと同年代の魔法少女、杉崎さんに話を振った。


「まあまあ、決まったことなんですから仕方ありませんよ。」


「ああ、かもですね。」


イヤホンを外し、律儀に応答した杉崎さんに対し、欲しい言葉が出て来ずに面白くなかったのか、吉永さんはつまらなそうに適当な相槌を返した。

自分から振ったのにひどいなぁ。

思わず苦笑してしまう。


「そーそー、決まったもんは仕方ないんだしさぁ、自己紹介でもしようよ。私、相澤夢乃ね。能力は氷を作ることだよ!」


流れを切って相澤さんが自己紹介を始め、じゃあ次はヤマイちゃんと指名したものだから自己紹介タイムになった。

ボクはあんまり話す方じゃないから、相澤さんのこういう話を回す力は素直に尊敬する。


「山井小百合。能力は電撃。ほら、次。」


「それじゃあワタシが。杉崎 聖䜌せいらんです。呼び方は名前でも、イヤホンさんみたいにアダ名でも何でもどうぞ。能力は自己再生です。皆さんよろしくお願いしますね。」


「吉永真紀でーす。能力は言いたくありませーん。はい、じゃあ鶴ちゃん。」


適当な挨拶で自己紹介を切り上げた吉永さんは、隣に俯いて座るメカクレの子に、マイクに見立てた右手を顔の前に差し出した。

次の番を振られた鶴ちゃんと呼ばれたメカクレの子、前野さんは恥ずかしそうにもじもじしながら立ち上がる。


「え、ええと、まま前野鶴美です…!能力は……えと、超音波……です」


蚊の鳴くような声で自己紹介をし終えると、前野さんは顔を真っ赤にして、逃げるように椅子に座って俯いた。


すごく恥ずかしがりなんだな。そう思ってぼうっとしていると、山井さんからアンタの番よと肘で突かれた。

確かに挨拶していないのはボクだけだ。


「梔子真白です。能力は目で情報が見えることです。」


ボクが挨拶をして、自己紹介が終わるとまたすぐにグループはどうだこうだと吉永さんが駄々をこね、山井さんと言い合いが始まった。


面倒くさい。

どうして、浪埜さんはこの二人がいて行けると思ったんだろう。


「それじゃあ、取り敢えずは2人ずつ3人グループで活動してみてはどうでしょう。ワタシと梔子さん以外はそれぞれペアみたいですし。」


言い合いの中ですっと杉崎さんが立ち上がり、そんな提案をした。


「悪くないわね。」


「おー!イヤホンさん、それいいですね!」


杉崎さんの提案には山井さんと吉永さんも好感触を示したので、結局当面は山井さんと相澤さん、吉永さんと前野さん、ボクと杉崎さんの3グループに分かれて活動することになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「少しいいですか、梔子さん。」


話し合いが終わり、解散になったので帰ろうとすると杉崎さんに呼び止められた。


「すみませんね、良く知りもしないワタシと組むことにしてしまって。もしだったら一人で活動していただいても大丈夫ですよ。」


「別に。気にしてないから2人でいい。」


そう答えると、杉崎さんの顔がぱぁっと明るくなった。


「それなら良かったです!ある人から話を聞いてまして、あなたのことが気になってたんですよ。だから組めて嬉しいです。」


「話?誰から?」


ボクの話なんて好んでする物好きなんているのだろうか。


「気になります?」


「うん。」


「きっと梔子さん吃驚しますよ。教えてほしいですか?」


「まぁ、一応。」


やけに勿体ぶるなと思いつつ頷くと、杉崎さんの口から1人の魔法少女の名前を教えられた。

その答えを聞いて、確かにボクは思わず立ち上がってしまうくらいにはビックリしてしまった。

何せ、一番聞きたくないなと思っていた名前だったから。



「魔法少女狩りの からです。」



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