風紀委員サマのありがたいお説教(3)

ボクの言葉に立科さんは何も口にせず、さっきまでのお勉強タイムの時とは数倍の、30個近いものを一度にボク目がけて飛ばして来る。

いくら一つ一つが単調でも、ここまでの数だと骨が折れる。でも避けれないわけじゃない。


そう思いながら立科さんのほうを見ると、ボクにはほんの少し、ほんの少しだけ口が綻んだように見えた。


瞬間、足に痛みを感じる。

見ると右太腿に擦過傷ができていた。

一体何が、そう考えたのも束の間、今度は左肩にガラスが突き刺さる。


飛んできた物は全部避けたはず………何か分からない。でも確実に何かされた。

向こうも何か隠し球があるらしい。はぁ、面倒くさい。



ーーーーー〈立科side〉ーーーーー


梔子さんの左腕にガラスが刺さりました。これでガラスが刺さったのも25箇所目です。

ここまで傷付いては足も腕も普段通りには動かせないでしょう。

それに…さっきから息も絶え絶え……梔子さんももう限界のようですね。


「諦めたらどうですか。避けられないことは梔子 真白さん、貴女が一番分かっているでしょ?」


私の言葉に返事はなく、梔子さんは足を庇いながら、今居る通りから十字路を挟んで向こう側の通りへ移動します。

諦めていないのでしょうか。しかし、結果は変わりません。


貴女の能力では、私には勝ちようなど無いのですから。


私の念動力はただ物を飛ばせるだけではありません。

動かしたものの内、2つだけ対象を追尾させられます。


見る限り、梔子さんは気付いているようですが……仮に気づいたところで、誰だろうと回避のしようはありません。

事実、今までの17人同様、貴女は私の攻撃を回避できなかったのですから。


貴女に勝ち目は無かったんですよ、初めから。


ゆっくり梔子さんの方へ近づくと、彼女は傷ついた腕でガラスは投げましたが、ガラスは私を大きく逸れて十字路のカーブミラーに当たって砕けました。


残念でしたね。最後の悪足掻きも失敗です。



何か、意図的に私の念動力で明かりを壊そうとしていたようですが……もう無意味です。

追い詰めましたよ、梔子さん。


「これで終わりです。覚悟してください!」


私は落ちていた鉄パイプを拾い、梔子さんへ飛びかかりました。



「ねぇ、几帳面な人って凄いよね。」


……? 何を言ッ!?


眩しさを感じたのも束の間、十字路へ飛び出した私を、いえ、まんまと私を、十字路へ進入してきた走行中のトラック、そのフロント部分が真横から襲いました。

地面へ投げ出され、蹲る私。

息を吸おうとするだけで体が軋み、全身が痛みます。

途絶えようとする意識……そんな中で暗くて見えにくいながら、時計が目に入りました。


「そのトラックの運転手さん。必ず11時にここを通るんだよ。」


………本当…ですね…11時…ちょう……ど……





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立科さんの方を見れば、気を失っているらしく地面から立ち上がる気配は無い。


魔法少女課と消防に電話し、帰ろうとすると、肩に痛みを感じた。


「……なさい‥‥…待ち…なさい……」


先程まで意識が無かったというのに、立科さんは折れた足で立ち上がり、ボクを鋭く睨んでいた。

………なんて執念だろう。


「認め……ません…から……………梔子 真白………私は……貴女を…認め……ない」


そう言って、立科さんは血だらけになった体で闇夜に消えていった。



それを眺めていると、視界がぼやけて、途端に立っていられず地面に倒れてしまう。


意識飛びそうだなぁ。まぁ、これだけ血が出てるし、しょうがないか。

そんなことを考えていると、誰かの足音が聞こえて、それがだんだん大きくなっていく。

ボヤけた目で確認すると、偶然通りかかったらしい女性が大怪我してるボクに駆け寄って来てくれたらしい。


「大丈夫ですか!意識ありますか!!あれ、この子…もしかして魔法少女?」



なんだ。条件なんかに当てはまんなくても魔法少女に見えるじゃん。


なんだか、あの子の鼻を明かしたような気がして得意な気分になりながら、ボクは意識を手放した。

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