風紀委員サマのありがたいお説教(2)
「まず変身ですが…梔子さんは手足の部分変身しかなされていませんね。何故です?」
「ただ面倒くさいからだよ。変身するだけで力使うし。でも、それってボクの勝手じゃない?」
ボク目掛けて飛ばしてくる看板や自転車をかわしながら、返答すると、彼女はムッとした様子で溜息を吐いた。
「………貴女の勝手じゃ通りませんよ。変身とは魔法少女という存在のアイコンなんです。だから、魔法少女であるのなら、その姿がどうであれ、全身の変身は必須です。理解いただけましたか?」
懇々と語りながら、その一方で常に念動力の攻撃を仕掛けてくる。
……ほんとにボクに聴かせる気はあるのだろうか
ーーーーー幼少期に魔法少女に助けられるもーーー午後10時頃は人通りも少なくーー
やり難い…ボクの能力の特質上、近づけないのはまずいし、彼女の念動力自体は単調だから避けやすいけど……このままじゃボクがバテて終わりになる。実際見るのが立科さんから少しブレてきている。
完全に相手のペースじゃん、面倒くさいなぁ。
ーーーーー滅多に怒ることはなくーー怒ると周りが見えなくーーートラックが11時にーーー
「それってさ……立科さんにとっての魔法少女の道理でしょ。なんでボクにそれを強制するの?それは、悪いけど、キミの」
瞬間、自転車が数台飛んできて言葉を遮らされる。
「別に…私は魔法少女が何を考えて、『魔法少女』をしているのか、なんてどうでも良いと思っています。無気力で惰性で行っていても、ヴェイグリア討伐での報酬目当てであっても。
だから、私は魔法少女にヒーローであれなんて思いません。正義の味方であれとも思いません。
ただ魔法少女は『魔法少女』という夢を壊さなければそれでいいんです。それが魔法少女の条件、私はそう思います。
裏を返せば、人の思い描く『魔法少女』に見えなければ、それは魔法少女じゃない。魔法少女であってはいけない。
……だから私が講義してるんです。魔法少女らしくない魔法少女なんて居てもらっては困りますから」
「何それ…どうでもいいよ。結局、おべんちゃら並べて、魔法少女のイメージとリアルのギャップ引き摺ってるだけでしょ。ボクの見えないとこで一人でやっててよ、そんなの。」
目の前にいる魔法少女の言葉に、ボクの無関心の吐露が口をこじ開けるみたいに出ていた。
ボクの言葉を聞いた魔法少女の顔は、怒るでも、泣くでもなく、ただ能面みたく冷徹だった。
今の今まで語っていた、夢見がちな少女のような言葉とその表情の乖離がやけに気味悪かった。
「そうですか。分かりました。それじゃあ講義は終了ですね。貴女は落第です。最低、全治一年は覚悟してください。」
これまで淡々としていた言葉の端々に刺々しさが滲み出ている。
どうにも激怒させたらしい。
でも丁度よかった。
この子の長話はもう飽き飽きだったし、それに
「落第なんかしないよ、ボク。」
この講義の試験勉強はもう終わったから
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