不吉な雲、降水率50%(1)
「やっぱりだ、真白ちゃんが勝ってた。」
「…どうも」
声が聞こえたので振り返れば、魔法少女事案相談対策課の
「先輩、第一声がそれじゃ困りますよ。梔子さん、概ね事情は分かってるけど経緯を説明してもらっていい?」
「…ええ、構いません。」
浪埜さんの付き添いで来てたらしい樋口さんにそこの魔法少女との一件を説明する。力の影響が抜けきらず、ボクの説明は随分とぶっきらぼうになってしまったが、樋口さんは気にも止めずにスラスラと報告書を作成していく。
この人たち、魔法少女事案相談対策課は魔法少女関連のことについての殆どを管轄している。彼女たちのトラブルの仲裁、非行の防止に、果ては愚痴の吐き出し相手まで。
どこかの新聞が書いていた「魔法少女の保護者役」ってのは言い得て妙だと思う。
「真白ちゃん、どうだった?あの子、魔法少女25人倒せるぐらい強かった?」
説明をしていると、樋口さんの隣で、書きかけの報告書を覗いていた浪埜さんから唐突によく分からない質問がとんできた。
「……それは…どういう」
意図が掴めず、答えあぐねていることに気付いた浪埜さんはゴメンと軽くジェスチャーをして、ボクに一枚の資料を見せてきた。
「最近、魔法少女を狙った通り魔事件が頻発しててさ。これ、ここ一週間で襲われた
「この中には結構強い子もいてさぁ、誰かは知らないけどかなり強い魔法少女だと思うんだけど………正直言って、ここの現場見てもちょっと紗夜ちゃんじゃない気がするんだよね。彼女だけじゃ全員倒せないかなって。」
「……それって…」
「察しついてると思うけど、
「多分、そこまでではないかと。」
恐らく2人が想定していた返答をすると、浪埜さんはやっぱりかぁと呟き、樋口さんは眉を顰めて溜息を吐く。
何か、その通り魔のことを聞こうとして、やっぱり面倒に思えて沈黙を続けていると、救急車のサイレンが聞こえた。
どうやら彼女のために2人が呼んでおいたらしい。
「呼んどいた救急車も来たし、書類も書き終わったから私らはお暇するね。」
「ご協力ありがと、多分いらないお世話かもしんないけど真白ちゃんも気つけてねぇ。」
「前にも言いましたけど、梔子さん。魔法少女同士で戦闘になりそうだったら、まずは課に連絡してくださいね。」
「…はい。」
ボクの生返事に、2人は何を言うでもなく、それじゃと浪埜さんが手をひらひら振って、来た道を忙しなく帰っていった。
そんな2人が遠ざかるのをぼんやりと眺めていると、視界の端に鈍い色の雲の群れが頭上の方へ流れてきていた。降水確率は50%。家を出る時からビニール傘を持ってきている。
それなのに、やけに雲は不吉に思えた。
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