【第一章】魔法少女なんて碌でもない

杓子定規な通り魔

魔法少女論考

魔法少女………ボクたちを表すのにこれほど誂え向きな言葉はないと思う。

すごく苦手だ。


魔法少女って言葉には、絵に描いたような正義のヒロインのイメージが内包されてると思う。

実際、別次元から来た化物ヴェイグリアを撃退したのは魔法少女だったし。

きっと大半の人は魔法少女に対して、このイメージをそのまま持ってただろう。

憶えてないけど、多分、昔はボクもそうだった。


「白髪のショートカットに、色の薄い灰色の目」


でも、そんなイメージを未だに抱く人なんてフィクションでしか魔法少女を知らない子供だけ。


いわゆる"第二世代ボクたち"なんて特に、人からのイメージは悪い。


「やっぱり資料に載ってた特徴と一緒だ、アタリね」


ヴェイグリアと戦いやすいようになんだろうけど、魔法少女は力を使えば否応なしに感情?心?深層心理?の蓋をはずされる。

だから、ボクみたいに極度に周りのことがどうでもよくなったりする。

それに目の前にいる魔法少女どこぞの誰かみたく、好戦的になるやつも。


だから、善意のヒーローじゃいられない。


「アナタ、魔法少女の梔子くちなし真白でしょ。アタシと勝負しなさい!」


ああ、やっぱり。

魔法少女になるのなんて碌でもない人間ばっかりだ。

無論、ボクも例外なく。






「なんなの、そのどうでもいいみたいな顔!」


顔に出てたかもしれない。

そう思っても表情を変える気さえ起こらない。


「まさか、アタシなんぞ戦わなくても自分より弱いとか思ってるわけ!!」


「別に思ってないけど」


中根紗夜ー右利きーーー好きな教科は数ーー


「知ってるのよ、アナタの能力。じっと見てたら相手のことが分かるんでしょ。便利な能力かもしんないけどね、使われる前に攻撃すれば何も怖くないわ」


ー能力は筋力強化ーーーーー初動は斧を右よりに振り上げーーこの時左側に注意を払う癖がーー


殴るならもう少しして……右頬か………


「一発で決めてあげる、アタシのn」


左足に力を込め、魔力をバネにして飛び出し、右頬を殴る。

目の前の魔法少女は対応しきれなかったらしく体勢を後ろへ崩した。


「な、なんd」


何でなんて、そんなの、話し始める前からからに決まってるのに。

ボクの能力知ってるんじゃなかったの?


まだ何かしてきたら面倒だから、ふらつく彼女をフェンスの方へ強く押したうえでダメ押しにもう一発顔を蹴る。


相手はのびたらしく変身が解けていた。

ボクも手足に纏っていた部分的変身を解除する。



原因は彼女か、それともボクか、もしくは両方か、今の戦闘及び諸々で地面のアスファルトや周囲のフェンスが少しひしゃげていた。


はぁ………周りに与えてしまった被害に罪悪感を感じないでもないが、能力の発動ゆえにか、そういう感情はどこか上滑りしてしまって、どうでも良く感じてしまう。



あぁ、やっぱり…………

もう一度同じ考えが出かけた時、ふと頭の中にまやかしのような、ステレオタイプな魔法少女のイメージが頭をよぎった。

なんだか、そのイメージを残しておきたくて、繰り返しの言葉をそっと胸の中にしまって目を閉じた。

意味があるのか分からないけど






「手と足だけの部分的な変身、マイナス15………倒した敵へ向けられる感情、マイナス7……評定…D……………失格ですね……」


だからかもしれない。ボクは遠くに誰か佇んでいたのに気付かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る