第2話 猫会
猫の定例会議をご存知だろうか?
夜な夜な集まって開かれるほぼほぼ無言の会合である。実はただ無言なのではなく、口の中でモゴモゴと話している。
少し前までは耳先に極小の装置を取り付けていたのだが、最近は毛無しどもによる野蛮な行為でそれもままならない。なので耳の皮の中に装置を入れ込むようになった。
「ゲンさん玉取られたってよ」
「私も体の中を弄くり回されて……恥ずかしいったらありゃしないわ」
「それでもこの街はまだ良い方だろ」
先祖返りのチビ太は、宇宙猫の技術を使えば臓器の再生ができることも知っているが、公に話したりはできない。先祖返りか覚醒している者だけに教えて良い決まりとなっている。
「チビ太はどうなんだ?」
「うちはまだ何もされてない。というか飼い主が時々股間を突いてくるんだけど」
「俺っちの家もそうだな。なんで突いてくるんだ? 顔埋めてきたりと行動が謎すぎる」
どこの家も似たり寄ったりで、毎度同じような話になる。
しかし、今日はいつもと違う話題が出てきた。
「隣町で一斉捕獲が始まったらしいぞ」
「どうする」
「家ありは良いわよね。私はそろそろナワバリ変えなのかなぁ」
野良は隠れ家を多く持っていたりするが、最近の毛無しどもの索敵技術は向上してきている。
困ったことになると長老猫の知恵を借りることもあるんだが、ここの長老猫は、未覚醒猫でありながら
しかし、足元もふらつきはじめ、最近では何を言ってるかわからないことも多い。
「ふがふが。わしゃらの昔はのぉ」
「また世迷いごとか?」
「猫又さぁまのお知恵を借りて何度もつるぴかたちを騙くらかしてきたぁぁぁんじゃぁぁ」
また始まったとみんなが囁き始めた頃、ボス猫が何か思い出したように話出す。
「そういえば二尾の猫を見たことがある。あれは地下の鉄箱の横穴だったか」
「え? マジっすか?」
「よし、ダメ元で誰か見てこい」
コツコツコツ。トコトコトコ。
これから誰が行くか議論するところで人がやってきてしまった。
良く無いことに子供連れ。
「あ、ねこちゃん! いっぱい」
「そうねぇ。いっぱい居るわね」
「ちょっと見ていきたい!」
ダメだと言ってくれ。早く通り過ぎてくれ。猫たちは一致した気持ちで固唾を呑んでいると、老猫が何を思ったのか子供に近寄り体を擦り付け始めてしまった。
「ふぎゃふぎゃ」
「かわいー」
「結構年取った猫ね」
全員が終わったと諦める。こうなると毛無しどもはなかなか動かない。
それを感じ取ったボス猫がチビ太の元へやってきて、小声で一言だけ告げる。
「お前が行け」
「「ふにゃぁぁぁ!」」
チビ太の泣きそうな声と老猫のとぼけた声が木霊し、本日の猫会は終了となった。
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