第12話

〜現在 アレストの部屋〜


「……思い詰めた顔をしていたレモーネが気になったボクは、勇気をだして声をかけたのだ。彼女は気を遣ったのか、弟のことは話さなかったが……ボクたちは仲良くなった」

「皮肉なものだな」

「あぁ……。だが、ボクはいつでもレモーネの気持ちを大切にしていた自信はあるぞ」

「そういうところが気に食わなかったんだろうな、弟サンは」

「あっ……」

アントワーヌが口に手を当てる。

「あんたらしくていい。というか、そんなことまで気にしていたらレモーネサンはしんでいたかもしれないだろう。結果論だが、それで良かったんだ」

「アレスト……」

アレストが目を伏せる。

「アントワーヌサン。俺たちが当たり前に使っている魔法は魔族由来だよな。ストワードとシャフマの思想は全く違うぜ。ついでに言えば、フートテチもだ。あっちは普通に魔族がいるし、細かく言えば魔族の血が入っているがその自覚がない人間も多い。その辺はどうするつもりだ?」

「それなんだが……」

ため息をついたアントワーヌの様子を窺うアレスト。

「……封印するのか?ストワードの封印は甘かったようだぜ。大陸丸ごと魔法を消せば、ストワードの思想通りの世界になるよねェ」

「ふふふ、キミには全て分かっているのだな」

アントワーヌの頬が緩む。

「困難な道になるだろうが、ボクは魔族との共存を目指したい。片方を滅ぼせば、必ずもう片方も傷を負う」

アレストが頷いた。

「そうだな。今はそうしようか。未来はどうなるか分からないが、今の最善を尽くそう」

「キミにも協力をし……いや、ボクたちだけでやろう。……そんな顔をするな」

「悪いね!すごく大変そうなことを押し付けられる気がして、つい!」

アントワーヌが顔を顰める。

「あ、魔族との共存ならリーシーサンにいろいろ聞いた方がいいぜ」

「何故?」

アレストがにやりと口角を上げた。

「実践中、だからさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る