第11話

「アントワーヌ!もっとしっかり槍を握れ!ストワード王家の立派な国王になるのだろう!!誰よりも強くあれ!」

「っ……!はい!お父様!」

訓練中、膝をつきそうになったアントワーヌだったが、父の言葉で体に力を込めて胸を張る。

「ボクは強くなります!お父様!!!」


その傍ら、第二王子のスタンは魔法の練習をしていた。レモーネは儀式後も傍に置いて。勉強のために彼女の知識が欲しいから、と国王に話したのだ。意外にも、国王はレモーネを王宮に出入りさせることを許した。

スタンは病弱で槍の訓練ができなかった。そんな息子が禁忌であるとは言え、熱中できるものを見つけた。それを父として保護したかったのだ。

「……お上手です、スタン様」

レモーネが拍手をする。スタンは黒魔法と闇魔法の上達がかなり早かった。

(あぁ、でも……)

攻撃的な魔法が上手いのは、やはり復讐を企てる魔族の器に相応しいからなのか。

ストワードで唯一許されている封印魔法は白魔法だというのに、スタンは黒魔法と闇魔法に魅せられていた。

(このままでは、魔にのまれてしまう)

レモーネは悩んだ。スタンが何かの拍子に魔にのまれてしまったら、この国で封印ができるのは自分だけだ。

「……レモーネさん」

「っ、は、はい」

急に名前を呼ばれ、驚いてかたまってしまう。

「あなたは母上がいないのでしょう……」

「家族は誰一人、いない……」

「もう、ここで暮らした方がいいですよ」


「……!!!」


「今までさぞ辛い思いをしたでしょう。ストワードで魔法が使えるのは魔女であるあなたと、この私だけです。

あなたを守れるのは私だけです」


レモーネが後ずさる。


(魔が、ではない!!!)


(この人は……最初から歪んでいる!!!)


(『だから』、歪んだ魔を扱うのが上手い……!)


ストワード王国の王子は、誠実でならねばならない。

そう、あのアントワーヌのように。

一途で、潔白で、透明でなければならない。

しかし、この男は違う。

憎悪、嫉妬、執着……元々の歪みがあるのだ。『第二王子である』というコンプレックスから来たものなのか?分からないが、とにかく歪んでいる。ストワードでは魔と相性が良いのは『悪いこと』なのだ。


この国で魔が禁忌なのは、人間が絶対なのは、魔と相性の良い国民を出してしまうのが直接傾国に関わるからだった。

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