第5話

「話って言ったが」

アレストが石だらけの地面を見る。

「……実は俺、1人じゃないのさ。仲間とはぐれちまってここにいる。だから帰して欲しいんだが」

「そうか……じゃあ里まで送ろう」

「え?」

ぼふん!と音が鳴り、煙が辺りを包む。

見ると、狼のいた場所には銀髪で褐色の青年が立っていた。

「山を降りながら話そうぜ!」

人懐っこい笑みを浮かべている青年。狼……ジュノの声だ。

「あんた、人間になれるのか」

「里ではいつもこの姿だからな。よし、結界を解いた。行こうぜ!」

ジュノが歩き出す。アレストもその後ろをついて行った。

(魔族だの結界だの、ファンタジックすぎるが)

(こいつは悪いやつには見えないんだよな)

善意なのだろう。種族は違うが、アレストはジュノの気持ちがわかる気がした。

(それにいざとなったら俺も魔法使えるし)

黙っておくが……心の中で言って、ジュノの背中を見つめた。



山道を歩きながらアレストがジュノに声をかける。

「ジュノクン、あんたさっき魔族って言ったが……それってどういうもんなんだ?」

「人間とは違う種族だ」

「うん、それはなんとなく分かるぜ」

「具体的に言うと、魔力をエネルギーにして生態を維持している種族だ」

「魔力……」

「人間たちも魔力を操れるが、魔力がなくなってもしぬことはないだろう?だが、血を抜かれればしぬ。心臓が止まればしぬ。魔族は魔力がなくなったらしぬ。だから寿命が人間の何倍もあるぜ」

ジュノが、ニッと口角を上げる。意外と表情豊かなようだ。

(魔力が寿命……まさにシャフマの砂時計だ。いや、あれは人間を砂時計の砂にしていたから……人間を魔力にした、と言えるのか?だとしたらこいつが俺に感じた『魔族』の正体はやはり……)

あの、悪魔だろう。

「……なぁ、あんたは人間を襲わないのか?」

アレストがあの悪魔になって感じたこと、それは「人間をころして寿命を貪る」ことだった。魔族全員がこうならば、ジュノは危険なのかもしれない。

「襲わないぜ。だって、人間のことは嫌いじゃないからな!」

「嫌いじゃないのか」

「そりゃあオレを見て怖がって石を投げつけて来たり、罠にかけて食おうとしたりするヤツもいるが……魔族の中にだって悪いやつはいる、怖いことをしてくるやつはいる。それと同じだ」

感覚は人間と変わらないらしい。個体差はあれど、ジュノのように優しい魔族もいるのだ。

「本能的にはどうだ?魔力は人間から取れないのか?」

「……相当たくさんの魔力を持ち、それを一瞬で消費する魔族は人間の魂を食べて魔力を回復すると聞いたことがある。だが、フートテチにはいないはずだ。というか、そんな強い魔族はもう残っていない」

「何故?」


「魔族のほとんどは、昔に人間に封印されたからだ」

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