第3話
アントワーヌが帰った後、アレストは椅子に腰掛けて日記を開いていた。
「魔族に会ったのはちょうど一週間前だねェ……。フートテチに行ったときだった」
王子の時から夢だったフートテチ旅行。ついにそれが叶ったのは今から一週間前。
〜一週間前 フートテチ地区〜
アレストはルイス、リーシー、ミカエラ、ヨンギュンと共にフートテチの田舎の道を歩いていた。
「山登りがしたい、ということですが……本当に山でいいんですか?フートテチには他にもたくさん見所がありますよ」
「そうだぜ!山の獣の肉もうめぇけど!」
「都会にもたくさん美味しいものがごぜぇます」
「……2人とも、食べることしか考えていないんですか?ほらもっと!整えられた街並みとか、真っ赤なお城とか!」
リーシーが飛び跳ねて主張する。
「フートテチのことはよく知らないが、俺は山登りがしてみたかったのさ。シャフマには山はないからねェ」
「そうかもしれませんが、山登りは大変ですよ。体力も気力も使います」
「ふふふ、大丈夫さ。体には自信がある。相棒も楽しみにしていたんだ。準備だってしてきた」
アレストは普段とは真逆の、ゆったりしてそれでいて露出がない山登り用の服を着ていた。
「そうですね。無理はしないように行きましょうか」
リーシーの言葉に一同が頷いた。
山を登り始めて何時間か経ったとき、ルイスの体調が悪くなってしまった。
「頭が痛いわ……」
「ルイス。……うん、これ以上は危険だぜ。リーシー!下山しよう」
「え、でもまだ途中よ!大丈夫、もう少し歩けるから……」
「初心者向けの山とは言え、油断は禁物です。また日にちを改めて来ましょう。慣れもあります」
リーシーが言う。ルイスは不服そうだったが、疲れには逆らえない。
「アレスト!戻りますよ!」
リーシーがアレストの方を向く。しかし、彼は既に相当前に進んでいた。
「おっと、聞こえないんですかねい」
ヨンギュンが呑気に言う。
「ま、待ってください!」
急に霧が深くなる。さっきまで晴れていたというのに。
そして、消えてしまった。後ろ姿が見えなくなったのだ。
「まさか、魔族……?」
リーシーが辺りを見回す。
「……あっしの分身の力で捜索します。ミカエラ」
「へいへい。ルイス、アレストのことは任せとけ」
ミカエラが走って霧の中に消えて行った。ヨンギュンも目を閉じて霧の中に分身を送った。
「ルイス、すぐに下山しましょう」
「アレスト……」
「大丈夫です。少し間が悪かっただけですよ」
ヨンギュンの本体がルイスを持ち上げて運ぶ。リーシーは荷物を持った。3人はゆっくりと下山する。
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