第3話 この中からは選び難い
「此処に居るのは今まで番に選ばれなかった者…。通称、負け組よ」
「負け組って、一緒にしないで欲しいなぁ〜?」
羽奏の言葉に千鶴は髪の毛をくるくると指で弄りながらあたかも独り言の様に呟いた。しかしその言葉はクラス中に聞こえてる為、ただの嫌味になってしまうのだが。
「光陽クンが私を選んでくれたらすぐにゲームセット…。光陽クンだってこんなとこ早く出たいでしょ?」
「いや、俺は」
千鶴は花の咲く様な笑みを浮かべる。いつもなら光陽もその笑顔に癒やされるのだが何せそのターゲットは自分。光陽からしたら早く終わって欲しい地獄の時間だった。
「あ、あの…」
しかしその時、か細く鈴の転がる様な声が聞こえる。
「そ、その方の言った通り、今決めるべきではないと思います」
―ごめんなさい、生意気言って―それだけ言うと紬は再びぬいぐるみに顔を埋めた。それは光陽からしたらありがたい助け舟、少女達から凄く余計な事にすぎなかった。しかし誰かが反論すると思われたが紬の言った事に何か言う者は居なかった。逆に頷き肯定しだす。
「まぁ、それもそうね」
「うんうん。それにコウ君が今日選んじゃうともうこのメンツで会えないんでしょ?それはやだな〜」
羽奏、海笠とそれぞれが意思を伝える。
海笠の言った通り、選ばれた者は晴々しくこのクラスから出れるが惜しくも選ばれなかった者はまた番候補が来て選ばれるまでこの教室から出る事は不可能なのだ。それを最後の一人になるまで続けるらしい。しかし最後まで選ばれなかった者はどうなるんだろう。そんな光陽の疑問に答えたのは仁奈だった。
「う〜ん…。分かんないけど風俗にでも売られるんじゃない?」
「真城さん、適当な事言わないでください(風俗!?そんなのたまったもんじゃないわよ!?)」
仁奈は紬あたりがびびるだろうと思って言ったのだが歌に本気で叱られてしまい、ちろりと舌を出した。これだからマジメ陰キャは嫌いだと仁奈は思うのだが彼女が実際は誰よりも本気にしてびびってることを知らない。
「どうなるかなんて分かんないけど、はい!この話はこれでお終い!おーい、来て〜」
海笠が手を二回ほど叩くと教室のドアが開かれ銀髪のメイド服を着た女性が現れた。
「彼を部屋に案内してあげてよ」
「畏まりました。では瑞樹様、こちらへどうぞ」
「・・・分かりました」
「いってら〜」
まだ気になることは多々あるがこれ以上言っても余計分からなくなるだけだろう。圧にもこれ以上堪えられそうになかった光陽は女性に連れられるまま教室を後にした。
♢♢♢
女性に連れて来られたのは光陽の家の自身の部屋よりも広いところだった。
「こちらが光陽様の部屋になります。校舎内でしたら自由に移動して構いませんが外に行く場合は私共にお知らせください。そうじゃないと“面倒臭い”ことになりますので」
そう言いお辞儀をして去っていく女性を見送った後、光陽はふかふかそうなベッドが目に入り思いっきりダイブして寝転ぶ。
「うわっ、がちでふかふかだ」
思った通り、ふかふかであまりの気持ち良さに眠くなり光陽は目を閉じた。
「ふぁ〜…あれ、俺寝たのか」
光陽が目を覚ますと既に朝日が昇っていた。どうやら自分はあのまま寝てしまったらしい。さて起きるかと光陽がベッドから降りようとした途端、コツっと何かに当たってしまう。良く見れば布団は盛り上がり、そこからもぞもぞと何かが動いていた。光陽は息を呑み込んで思いっきり布団を剥ぐとそこに居たのは・・・。
「・・・四条さん!?」
「おはよ〜、光陽クン?」
そこには下着姿の四条千鶴が居たのだった。
彼女は俺の花嫁候補、しかしその瞳は獲物を狩るかの様だった 白夜黒兎 @yuka822
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