第2話

「犯人はサメですね」

 事件現場に土足で現れた男はそう言った。

「あいつ誰だよ」

「お前の相棒」

「うそ…だろ…」

 今回の凄惨な死体を見たときですら、ここまで声を失う事はなかった。

「うそじゃないぞ。ほら、噂の元キャリア組の変人だ」

「変人にも限度ってものがあるでしょ。それに助さんが俺の相棒では?」

「残念だったな、良悟。俺は今度入ってきた新人のお目付け役よ」

「かんべんしてよ」

 まったく聞いていなかった。そもそも、捜査会議にも呼ばれなかったのに駆り出さられた仕打ちがこれか。辞めようかな。

「まあ、何事も経験よ」

「なら、代わってよ。助さん」

「嫌だね」

 くそっ。元キャリアって事は、俺よりは階級が上かよ。どうせいっちゅうんだ。

「はじめまして。今回の捜査でご同行させていただく篠原良悟です」

「警部補の関田忍だ。形式的な挨拶は抜きにしよう。それと敬語も結構だ」

「お気遣いありがとうございます。それで、警部補の見立ては、その、あれですか」

 流石に明言しにくい。犯人がサメ?陸の繁華街で起きた事件なのに、サメが犯人?わからん。1つもわからん。

「そうだ。この犯行は未確認シャークによるものだろう。まずはその線で探っていく」

 勘弁してくれよ。と、心底思った。しかし、階級社会の警察で俺に意見できることわりはない。ただ、関田の後についていくしかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る