第28話 ご機嫌な咲ちゃん
洗濯やら掃除やら、あらかた家事をやり終えたお昼頃、文香さんから連絡が来た。
『やっほー!夏休み楽しんでますかー?』
『こんにちは。はい、ゆっくり過ごしてます。』
『朝雄二さんから聞いたとは思うんだけど明日お茶しない?ゆっくり話す時間とかもなかったし!ね!明日の10時に駅前のファミレスね〜』
聞いてくれたところまではいいが、もう俺が行くことは決定事項みたいだ。
『分かりました。』
『それじゃあ明日ね~』
俺が夏休みに入り咲が保育園に通うのは明日までとなっているので問題はないが、俺はママ友のお茶会というものにいいイメージがない。
あくまでイメージであって実際はちがうのかもしれないが、ドラマなどでは結構バチバチしていたりする場面を見たりするし、保育園の保護者会の時にも仲間外れにされたという話も聞いたりする。
文香さんに関しては何も心配はしていないが、他のママがどういう人なのかというのが心配だ。
まぁ文香さんの友達なら大丈夫か?
というわけでお茶会についてはもう何も考えないことにして俺は昼食をとる。
そして咲の迎えまでの時間をおやつ作りに使う。昨日のおやつはホットケーキで、その時に明日はゼリーがいいと言われたのだ。
なぜ市販のゼリーではないのかというと、咲に怒られたことがあるからである。基本的に咲がお店のでいいと言った時のみ市販のものが許される。俺は料理やお菓子作りが好きな方なので別に苦ではない。このくらいのことはワガママのうちには入らないと思っている。それに俺の手作りを喜んでもらえるのはなにより嬉しいことだ。
みかんと桃の缶詰を開けて中のシロップだけを耐熱ボウルに入れてレンジで温める。
温まったシロップにゼラチンの粉を加えて溶けたのを確認したらそこに炭酸水を加えゼリーの素の完成。
みかんと桃を菊や桜、トランプの4つのマークの型にそれぞれ分け、そこに先ほど作ったゼリーの素を入れていきラップをする。
ある程度熱が取れたところで冷蔵庫に入れて後は固まるのを待つだけである。咲を迎えに行って家に帰ってきた頃には出来ている。
迎えまではまだ時間があったので洗濯物をたたんでから保育園へと向かった。
「おにーたーーーん!」
まだ園庭を歩いているのだがパンダ組の部屋から俺が来るのが見えたのか、咲はすでに帰り支度を済ませてものすごい勢いで駆けてきた。
他の迎えに来ているママさん達の目がこちらに向いており、とても恥ずかしいが俺はその場にしゃがんで咲が来るのを待つ。そして俺の胸に飛び込んできた咲をしっかりと受け止める。
「おかえり。ちゃんといい子にしてたか?」
「はい!」
ピシッと手を挙げる咲の頭を優しく撫でてから二人で先生の元へ挨拶をしに行く。
「お兄ちゃんがここに来るまで待てなかったみたいです」
先生は何故か嬉しそうだった。
「すみませんでした。ほら咲、先生にご挨拶は?」
「ありがとーございまちたっ!さよーなら!」
「はい!また明日ね」
「うん!ばいばーい」
その後俺も挨拶をして咲と手を繋いで家へ帰った。
きちんと手洗いうがいをした咲はリビングで楽しみにしていたおやつが来るのを待っている。
「おやつはまだかなー?ぜりーたんはまだかなー?」
プラスチック製のスプーンを握りしめてニコニコしている。俺は冷蔵庫からゼリーの入った型を取り出しお皿に出してから咲のところへ持っていく。
「やったー!きょーはいっぱいある?」
「いっぱいあるけど食べ過ぎたら夜ご飯食べれなくなるぞ?」
「よるごはんのあとはー?たべていい?」
「じゃあ一個だけな」
「はーい!」
話が終わると咲はゼリーを食べ始めたのだが、俺の予想とは違って食べるスピードがゆっくりだった。
咲は一口一口味わうように食べていた。
咲の表情を見れば分かるが俺としては聞かずにはいられない。
「美味しいか?」
「うん!おいち~よぉ~」
ほっぺに手を当ててニコッとするその可愛らしい姿に俺も満足である。
「おにーたんきょーものるくんみる?」
「今日もノル君やるから大丈夫だよ」
「ちーがーうー!おにーたんもいっちょ!」
「じゃあ一緒に観よっか」
おやつを食べ終わった後、咲がノル君の放送時間まで待てないというので録画してあるノル君を観ることにした。
「あー!いけないんだー!」
「のるくんいいこだねー!」
咲は俺の膝の上で盛り上がっている。今日は中々テンションが高い。
「おにーたん!えへへ〜」
そして早くも甘えん坊さんらしい。大好きなノル君を観てる途中にもかかわらず、俺の方に振り返りお決まりのぎゅーである。
「よしよし。もう甘えん坊さんなのか?」
「うん!だっていっぱいいられるもん」
「そうだな」
「あしたもー?」
「明日もいっぱいいられるし、その次の日からはずっと一緒にいられるぞ?」
「ほんとー⁈やったぁー!!」
こんな感じで今日は寝るまで終始甘えん坊さんでご機嫌な咲であった。
ちなみに一個だけと言った夜ご飯のデザートは咲のおねだりに負けて結局2個になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます