第9話 愛華の一目惚れ
私は白崎愛華、仁徳高校調理科の二年で主に生徒会として活動している。部活動は中学の時にバスケをしていたが、高校では生徒会の仕事が定期的にあるので部には所属していない。
自分で言うのもなんだけど、私は小学生の頃から周りにずっと可愛いとか綺麗だねとか言われてきた。告白だって数えられないくらいされてきたし、高校に入ってからは今までの比にならないくらいされている。
きっと女の子なら一度はそんなモテモテな人生を歩みたいと思うだろう。
しかし実際は学校の女子から羨ましいと言われる反面嫉妬されたりしている。
そして男子からは特別扱いを受けたりするが、常にエッチな目で見られている気がする。
私はそんな環境がとても嫌だ。というより誰でも嫌でしょ?
幸い私には心から信用できる幼なじみが同じクラスにいて、何かある度に助けてくれるのでこの高校にかろうじて通うことができている。
その幼なじみ以外に知り合いはいないので、もし幼なじみがいなかったら私はいじめられていただろうし、すぐに高校を辞めていたと思う。
だから私は普通の人生を望んでいる。
中学生の時、幼なじみと彼氏を作れば解決するんじゃないかって話をしてそれから彼氏を作ろうとした。
でも告白してくれる人はみんな私自身を見てくれていないのが丸わかりで、その告白の言葉も私を見る目もものすごく気持ち悪かった。
告白で多かったのは『一目惚れしました!付き合ってください』とか『一目見た時から好きです!』である。
私はどうして一目惚れから一気に好きとか付き合ってほしいという気持ちに変わるのか意味が分からない。
私のことをよく知りもしないで、どうして好きと言えるのだろう。
容姿が良ければそれ以外はどうでもいいというのだろうか。ただエッチしたいだけなんじゃないの?
彼氏を作ろうという解決策はすぐに却下することにした。
何より決め手になったのは偶然聞いてしまった男子の会話だった。
「白崎って本当に可愛いよなー。誰も告白オッケーしてもらえてないらしいじゃん」
「好きな奴いるんじゃない?」
「でも男子と話してるところなんて全然見ないぜ?」
「まぁ確かにな」
「でも付き合えたら最高だろうな~。あんなに可愛くてさ、胸も結構デカいじゃん?それを好き勝手できるんだぜ?あーめちゃくちゃにしてぇな」
「お前変態だな」
「白崎と付き合いたいって思ってる奴なんてみんなそんなことしか考えてねーから」
そう言って笑い合うクラスの男子たちを見て私はゾッとして、まだ授業が残っているのにもかかわらず走って家に帰ってベッドの上で震えていた。
その日から学校には行くことができなくなってしまった。幼なじみが毎日家に来て話を聞いてくれたり、相談することができたおかげで二週間くらいでまた学校に行くことができた。
幼なじみは今まで告白してきた男子全員がそんなことを考えていたわけじゃないと思うよって言うけど、私は頭では分かっていても心からそれを受け入れることはできなかった。
そこから私は男子のことを信じられなくなった。
そして告白の言葉によく出てくる一目惚れというものなんて存在しないと勝手に決めつけた。
少女漫画やクラスの女子がいう一目惚れは幻想だと。
だってあんなに分かりやすく、ただ一目見ただけでドキッとすることなんて絶対にないでしょ。
しかしそんな私に突然転機が訪れた。
今日私は今まで信じてこなかった一目惚れをしました。
漫画やクラスの女子のあの過剰だと思っていた表現がまさか本当だったなんて。
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