第12話 シールド戦隊の日常2



「ああー、こんな仕事より可愛い女の子と遊びてぇ」




 どうもー、達彦です。可愛い女の子が大好きなプレイボーイでっす。




「可愛い女の子ならいるよ」




 と、隣にいる星那がニコニコしながら顔をのぞかせてきた。




「あー、はいはい」




 星那も可愛いは可愛いのだが、さすがに仲間ってなると違うんだよなー。ずっと一緒に居るから毎日ナンパする訳には行かないでしょ。


 俺が戦隊になったのは、他でもない可愛い女の子と共同生活が出来ると聞いたから、ではない。それもちょっとは関係あるけど、一番は世界の可愛い女の子を守るため、である。


 これには一つ話があって。僕は怪人のニュースが流れるたびにいつも怒っていた。そうなったのは以前に怪人のせいで亡くなった推しのアイドルのニュースを見てからずっとである。怪人のニュースが流れるたびにまた可愛いかもしれない、可愛くなるかもしれない女の子が殺されたかと思うと怒りが収まらないのだ。


 そんなこんなで戦隊になったわけだけど、戦隊になってから良いことがあった。女の子にモテまくるのだ。普段の時も、売れない歌手をやっている時も、全然モテなかったのに今じゃその真逆である。


 タリララー、タリララー。


 調査をしていると音楽が聞こえてきた。元歌手だった自分としては興味が湧く。




「ちょっとだけいい」




 星那に確認を取る。




「任務中なんだけど」




 案の定、腰に手を当てて反対されてしまった。




「いや、ちょっと気になってさ。なんか怪人の気配がする気がするんだ。ってか休憩も必要っしょ」




 手を合わせてお願いする。




「はぁ、いいわよ。私、トイレ行ってくるから、ちょっとだけね」


「ありがとうございます、神様、女神様。今度デートしてあげるからー」




 俺はそう言いながら走って向かった。




「そんなんいるかー」




 星那が何か叫んでいるが気にしないで進んだ。


音楽の中心に行くとやっぱりだ。ライヴをやっている。しかも何かのコンテストのようだ。審査員がいて点数を出している。




「さて、では予約エントリーの人はここまで。ここからは会場に来てくれた皆様による当日エントリー枠です。三枠まで用意しています。早い者勝ちですよー。さあ、我こそはと思う方、並んで下さい」




 どうやら視聴者参加枠があるようだ。ラッキーだ。歌ってしまおう。急いで行くと三番目に並ぶ事が出来た。


歌手をやっていたのは言うまでもない、モテるためである。が、それだけではない。やっぱり歌がとてつもなく好きだったからである。歌を歌っている時は一番自分らしいと思える。沸き立つ喜びがそこにあった。だから、取り組む時も一生懸命に取り組んだ。


ただ、売れなかった。デビューこそ出来たものの人気がつかなかった。それは今でも心残りだった。




「では次の方お名前と歌いたい曲、簡単な自己紹介をお願いします」




 どうやら俺の番が来たらしい。俺は台上に歩いて行った。




「どうもー皆さんこんにちは。達彦です。歌いたい曲はcode of earthと言いたいところだけど、たぶん入ってないからGO TO HEAVENの刹那の愛を歌いたいです。実は僕は皆のヒーロー、シールド戦隊のグリーンをやらせてもらってます」




 オオー、会場からどよめきが起こる。




「実はグリーンをやる前は歌手をやってました」




 さらにオオーとどよめきが起こる。




「これはとんでもないゲストがやって参りました。あのシールド戦隊のグリーンでかつ元歌手。これは期待出来るかもしれません。ラストを飾るにはふさわしいでしょう。では、準備が出来ましたので、どうぞ」




 音楽が流れ始めて、僕は歌い始めた。音楽に乗って歌い上げる。いつぞや歌ったライヴを思い出し、僕はノリノリで歌うことが出来た。すると、会場がたくさんの拍手で包まれる。気持ちいい。俺が欲しかったものが今、ここにある、と思った。




「素晴らしい歌声でした。声が綺麗でしたねー。さすが元プロ歌手といったところですね。では、最後の方の採点の前に、このまま全体の結果に入らせて頂きます。今回の第八回幸せ歌祭りの優勝は、シールドグリーンの達彦さんです。おめでとうございます。文句なしの百点でした」




 採点の前に発表があるなんて変だと思ったが、結果を聞いて納得する。変わった演出だ。




「準優勝はアキラさん。九十八点でした。いやー、惜しかったですね。今回は六度目にしてようやく優勝か、というところでしたが、今回も優勝には届かずでした」




 一通りのエンディングが終わると、背後から強い悪寒を感じた。振り返ると、準優勝のアキラがこちらを睨んでいた。




「お前さえいなければ、オ前さえイナければ、オマエサエイナケレバ」




 俺に対する不満をぶつけながら、一歩一歩近付いてくる。そして一歩踏み出すごとに身体が変化するようにチカチカする。


まずい、これは怪人化だ。




「シールドグリーン、変身」




 すぐに変身して戦闘態勢に入る。




「ウオー――――」




 そしてアキラが怪人になってしまった。




「下級怪人が二人出てきた」




 守人の声だ。守人の方にも出てきたらしい。




「ごめん。こっちにも出てきた。俺達は向かえない」




 星那ももうすぐ来るだろう。




「こちらは下級怪人二人だ、俺一人でもなんとかなる」


「OK,達彦、そっちは」




 玲奈の声の傍ら星那がやってくる。




「ってちょっと、これ上級怪人じゃない」




 イエローが驚いている。自然発生変化型の怪人は上級怪人だ。




「今イエローも来たけど二人じゃまずいかも。たぶんこいつ上級怪人」


「了解。帯人は人々の避難を。私はすぐに向かう。守人はなんとか一人でお願い」


「「「「ラジャ」」」」




 しかし、なんでアキラが怪人に。いや、そんなことよりなんとか皆が来るまで持ちこたえよう。

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