通勤風景
私は毎日通勤電車に乗る。
電車は混雑している。
今は吊り革を掴み前を見ていた。
私の隣にいるスーツ男性はスマホに映っているピンク色のマンコを凝視していた。
(アニメキャラ、金髪全裸の美少女がウインクしながらマンコをクパクパ、延々と続けているという動画であった。恐らく昨今流行のものなのであろう。)
不意に後ろから攻撃を受けた。
見れば分厚い体の太ったおっさんが分厚いリュックを背負ってこちらに押しつけてきていた。
嫌な感じだ。
狭苦しい混雑している電車に、分厚い体で分厚いリュックを背負うとは、100%悪意でしかありえない。
そうして、前を見れば、座っていた分厚い体をした太ったおっさんが立ち上がり、そいつも分厚いリュックを背負い、背を向けると押しつけてきたのである。
分厚いリュックに挟まれた状態。
あ、あ、としか声がでない。
内臓が圧迫される。痛い。痛い。
バサス!バス!
私を挟んでいる二人のリュックからデカい音が鳴り、一瞬後に巨大な鉄板に針を取り付けた拷問器みたいなものにリュックが変容し、私は全身を貫かれて死んだ。
鉄板から無数の、鋼鉄の針が飛び出して。
ブシャ!!という弾ける音。
ドババ血飛沫。
私の臓物や血が、大量に電車内の床にぶちまけられた。
「珍しい光景!インスタにあげなきゃ!」
黙々とスマホで撮影する人々。
もちろんスマホを持たず、夢中で鏡を見ながらメイクしている女性もいる。
前述した通り私の肉体はぐちゃぐちゃミンチとなった。
だから、私は今、風になって吹き渡っています。
大きな声で歌っていますが、誰も気づきません。
多分、千くらいの風になっています。
そして私にはお墓などない。
親族には私の墓にわざわざ参拝に来る人間などいないのだから墓なんぞ作るなと、予め言ってあるのだ。
もちろん葬式なんぞする必要はない。
一体、私が死んだところで誰が参列するというのか。
金がもったいない。
だから、葬式はいらない。墓もいらないのだ。
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