第8話 俄
冬と春のあわいにある星空が、わたしはすきだ。
なんとなく。
星を見る時は、そうと決まっていることをなぞるように、タバコに火を付ける。
これも、なんとなく。
鬱屈か、あるいは「かくあれかし」と望んだ
特に、理由はないのかもしれない。
勤勉で不断な少年が、四角い枠の中で煙を呑んでいたから、わたしもそうしたくなった。きっかけといえばそれくらいだ。そこに高尚な意見も尖った不服もないのだ。
世間はこれをにわかと呼ぶ。
平成における成人を迎えてより2年。法に触れなくなっただけ。青に魅せられた彼の感傷ともまた別の、夜に吐く煙より薄いわたしの非行は(別に非行ではないのかもしれないが)まあ呆気ない。
限りある今を代謝し、やがて彼が青い句読点を打つまで。なんとなく、は繰り返される。
雨上がりの匂いがなんとなく好きであるように。
しんと音を消す雪を意味なく眺め続けるように。
にわかに始まり理由なく終わる呼吸をわたしは繰り返す。
「人間、意味なく生まれるんだ。なんとなく生きて意味なく消えたって別にいいじゃないか」
彼の見た早朝が、理由なく美しかったように。
これは私の啓蒙である。なんとなく、わたしはそれを愛している。
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