第9話 と、云ふ

 ガイコツと呼ばれた僕はただ黙つて丘に立ち。

 死神と呼ばれた僕は、小さくなつた君を抱き。

 遠く寄せては返す波を、異国のように睨み据え。


 花の鬼と言われた君は、ただ黙つて此処にあり。

 春の姿と言われた君は、小さくなつて壺になり。

 僕の冷たい胸の中で、灰と骨だけうつつに残り。


「僕ら、やつと丁度良くなれたね」と云ふ。

「あなた、寂しくなつたわね」と云ふ。


「君をただ愛していたよ」と、云ふ。

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