第4話 被らないお面

小さい頃に買ってもらったお面たち。ヒーローたちのお面だ。今はもう被らないけど、なかなか手放せずにいる。それを先日、殆ど処分した。売れるかわからないが、今では手に入らなさそうなものもあった。でも思い切って捨てた。


使われないものには価値があるのだろうか?形が崩れて機能が果たせなくなった、いわゆる壊れたものは死んでいると言えるだろう。ではしまいこんだまま使われないものはどうだろうか?死蔵しているのなら、ものとして機能を果たせずにいるのだから死んでいると言えるのではないか。ただしまいこんだままにしていては、スペースがもったいない、賃貸ならものにも家賃がかかると言う考え方もあるらしい。使わないものが占める空間が多いと、保管しているだけで家賃の何割かを占めることになる。ものが部屋を占拠する。


読み終えた本は本棚に納めている。私の場合、本は情報を得るメディアとしてだけでなく、本の世界に連れていってくれるアイテムであり、集めて楽しいコレクションでもある。好きな作家の本が揃っているとそれだけで嬉しい。だから読み終えてあまり手に取らなくなったとしても、その本が死んだとは思えない。


お面を手放して、寂しさを感じた。被らないお面たちだけど、捨てたら本当に死んでしまう。そしておそらく、同じお面は二度と手に入らない。でもこうして、私は子供だった頃の名残を一つ手放した。

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