幼い頃に事故死した(はずの)同級生の少女と、まさかの再開を果たしてしまった、二十五歳の青年のお話。
ある種のファンタジーを描いた、現代もののお話です。
状況を考えるとどうにもホラーっぽいのに、絵面はどこかメルヘンチックだったりするところが魅力的。
ギャップ、というよりは、なんだかふらふらと心の置き所が定まらないような、この不安定な感じがそのまま妙味になっているような感覚。
主人公の青年の心情が好きです。
同級生の少女の髪を切る、という行為。その目的というか動機の、わかるけどわからないところ。
また、その回想にかなりあやふやなところがあるのも読んでいて楽しかったです。昔のことって案外覚えてないものですよね、という意味ではよくある話でもあるのですけれど、それを差し引きしても語り口が曖昧すぎるところ。
なんだか彼自身の不安定さが垣間見えるような、その読み味が楽しい作品でした。読んでいて視点保持者の人格に触れられる文章って好きです。