第6話 初めての契約

やっっと、長い一日が終わった。ホームルームを終え、寮に向かう。

クレアとは、いつかペアを組むことを約束して部屋の前で別れた。


ばふっとフカフカのベッドに身を沈める。それにしても、今日は濃い一日だった。


「神の左脚、かぁ」


実感がわかないが、おそらく本当のことだ。脚力には自信があったし、左脚に謎の模様が入っているし。しかも、ストッキングを穿かないとすべて隠れないという大きさで。

とりあえず、明日の授業だ。リージェンの足を引っ張らないようにしないと。


―次の日


私たちは、うっそうと茂った森にいた。その中でも、ひと際存在感を放つ遺跡の前に皆が集まっている。


「それでは、昨日決めたペアで仮契約を結んでください」


方法は先ほど教わった。仮の契約であれば、手元の水晶で行えるらしい。


「…リージェン、いくよ?」


「うん。相手の水晶に魔力を込めればいいんだよね」


互いに水晶に魔力を注ぐ。なんだか、温かい気持ちになり、リージェンに対する絆が強まった気がする。彼も同じだったみたいで、二人して気まずくなる。


突如、左足の紋章がぼうっと光る。驚いた。私の中にいる、神の分身ってやつがリージェンを認めたのだろうか。


「では、古代遺跡の中に入り、ゴールにある魔法陣で帰ってきてください。遺跡の中には様々な罠があるから協力してゴールを目指すように」


皆期待に胸を膨らませ、遺跡に足を踏み入れた。



数時間後、私たちは遺跡の前に帰ってきていた。


「いやぁ、簡単でよかった!」


「僕もラルも無事に帰って来られて良かったね」


「あんまり契約っていう力は実感できなかったけど、リージェンといたら力が湧いてきた気がする」


「僕もラルに合わせて足が速くなった気分だよ」


二人で会話を交わしながら、他の人を待つ。


「でも、仮とはいえ初めてがリージェンで本当に良かった!」


「…え」


「リージェンは優しいから、変なこととか命じてこないでしょ?多分、契約中は[使徒]は[使役者]の言うことに基本従わないといけない気がするんだよね。多分だけど」


そうなのだ。契約後、リージェンの言うことには逆らってはいけない気がずっとしていた。「ラルは、あっちを探索して」と言われたときは、行動を制限されたと強く感じた。


その時、私は懐からお菓子を取り出している最中だったのに。


「へぇ、そうだったんだ」


「うん」


笑みを絶やさないリージェンが少し、ほんの少しだけ、不気味に見えた。



全員が無事に帰還し、次のペア決めが始まった。

私に残されたのは、サイファー王子かグレンか。…選択肢がもっと欲しい。


「ギン、だよね。ギンは次、リージェンかグレン、どっちと組みたい?」


オッドアイの青年に話しかける。クールでとっつきにくいけれど、彼は話しかけても大丈夫な気がした。…ギンがどっちを選んでも私は絶望するんだけど。


無表情の彼は口を開く。


「お前、後で部屋こい」


「…は?」


いきなり呼び出しを食らった。あれ、私先に質問したよね?



「いやいや、誰と!組むか、って聞いてるんだけど!グレン?リージェン?」


「リージェン。わかったな?来い。水晶で呼ぶから」


「あっそう!行くかは知らないけど、分かった!…うわ、どうしよ」


誰と組めばいいんだ。決断の時が来た。

サイファー王子かグレン。どっちも嫌だぁ。

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