対ダンク!

 全チームの第一試合が終わるまで、勝ったチームはみんな僕らと同じように会場横で他のチームの試合を見て分析をしていた。他のチームがどのような魔法を使うのか知ることは勝つ為に重要な情報収集なのだ。

 四試合目が行われている時、ダンクのチームで中心になっていた女子の先輩が僕らに話しかけてきた。


「あなたたち、凄い魔法使うね。本当に一年生? うちのダンクとは大違いね!」


 どうやらこの女子の先輩がダンクのお姉さんらしい。確かにダンクとは少し顔が似てるかもしれない。


「ダンクのお姉さんですか?」

「そうよ。次の試合はよろしくね。あなたたちとは良い試合ができそうだわ。」


 そう言うとダンクのお姉さんは行ってしまった。ダンクのお姉さんは全然ダンクとは雰囲気が違う。話ながら体を伸ばしたりストレッチをしているし、汗がよく似合うスポーツが得意そうな爽やか系女子といった印象だった。


「あの人、魔法使いじゃないわね。騎士学科だわ。剣技大会でも見た気がする。」

「あ、やっぱりそうなんだ。」


 ファーの話を聞いて僕は納得した。違和感の正体がわかったからだ。世間知らずで何も知らなかった僕でも、魔法使いらしいとからしくないとかそういう感覚がわかるようになったのだと思うと感慨深い。



 そして第二試合、ダンクたちのチームとの対戦になった。僕らはまた最初に自動防御魔法と身体強化の魔法を使う。

 ダンクのお姉さんはボールを獲得するとこちらの様子を覗っている。ダンクは僕と同じように自陣のゴール前でゴールを守っているようだ。身体強化をしたファーがボールを奪いに行く。すると、ダンクのお姉さんは離れたところにいる他の三年生の選手のところにボールを蹴ってパスする。ファーがそちらに向きを変えると、再びボールはダンクのお姉さんのところに蹴り戻される。まずい、ファーは一人だから翻弄されている。僕は連射追尾魔法でボールを持っているダンクのお姉さんを狙い撃つ。


「え!?」


 ダンクのお姉さんは防御魔法に守られつつ、ボールをドリブルしながらこちらに向かってきた。防御魔法を使いながら移動するのは難しいはずでは? 僕は相手チームの配置を確認した。僕らの陣地まで攻め込んでいるのはダンクのお姉さんを含めて三人。自陣にダンクともう一人。そのもう一人がどこかに隠れて一人で防御魔法を正確に使ってチームの選手を守っている。……あれはなかなかの使い手だ!


「ファー! ここは僕にまかせて、あっちを!」

「わかったわ!」


 ファーはボールを追うのをやめて相手チームの自陣に隠れている選手に攻撃魔法を撃ち込む。こちらに向かっていた選手が足を止めて防御魔法で、ファーが狙った選手を守る。でも、ダンクのお姉さんは止まらない!

 僕はダンクのお姉さんに、ゴールに向けてボールを蹴られると思った! 僕はラケットの魔法でゴールの左側を守る! しかし、ボールは蹴られず、隣の選手にパスされた。フェイントだ!


「それはさっきの試合で見たからね!」


 ゴールとラケットの隙間を狙われ、ボールがゴールに向かって放たれた! やばい! 僕は苦し紛れに手を伸ばす!

 ボールはギリギリ、ラケットのフチで防がれて、ゴールに突き刺さることはなかった。危なかった! しかしまだボールは転がったままだ。ボールは活きてる! ダンクのお姉さんがすかさずボールを蹴る体勢になる。この近距離で! 僕はラケットを目の前に構えてなんとかそのボールも防いだ! しかし、蹴られたボールの威力は強い! ボールはラケットで弾かれて宙高く飛んだ。相手チームの選手がボールを拾おうと待ち構えている。

 と、その時横から飛んできた影がボールを攫った。ファーの網魔法がボールを捕らえたのだ!


「ごめん、ファー!」


 しかし僕の声を届く間もなくファーは相手ゴールに引き返していく。ダンクのお姉さんたちがファーを捕らえようとするが身体強化魔法を使っているファーには追いつけない。僕はファーを守るために他の選手たちが自陣に戻れないように必死で連射追尾魔法を撃った。


 そしてファーはついにダンクと対峙した。


「おう、家無し! 一騎打ちだ! 来いよ! ゴールは割らせねーぜ!」

「うっさい!」


 ファーが怒濤の攻撃魔法でダンクを攻撃する! 日頃の鬱憤を晴らすかのように!


「ちょ、ちょっと待てよ、お前! ルールわかってんのか!?」


 ダンクは防御魔法を使って自分を守るのに必死だ。


「あんたも反撃してみなさいよ。」

「なんだと!?」


 逆上したダンクが防御魔法を解いて攻撃魔法に切り替える。しかし、当然ダンクの攻撃魔法は自動防御魔法をまとったファーには届かない。ダンクは時間差で撃たれたファーの攻撃魔法を食らって外野に飛ばされた。そしてファーは難なくボールをゴールに入れた。


「ああ! 何やってんの! あのバカダンク!」


 試合会場にダンクのお姉さんの叫び声が響く。

 ダンクを欠いて陣形が崩れた相手チームは、攻撃の役割だった選手も自陣に残らざるを得なくなり僕らのゴールを脅かすことはなくなった。そして更に僕とファーの挟み撃ちでもう一人外野に飛ばされた後は防御魔法にも隙ができて、次々と討ち取られていった。申し訳ないけどこれはスポーツじゃない、魔法大会だからこういう終わり方もある。


 僕らの勝利だ!

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