第八話 魔法大会

秋の魔法大会

 魔法大会は剣技大会が行われた時と同じ、学校の敷地内の競技場で行われる。

 僕は競技場内の試合会場を確認した。剣技大会の時とは違い、芝生のような背の低い草が敷き詰められていてその下は土のようだ。白線でお互いのチームの陣地が表されていて、両端にはサッカーゴールのような枠が置かれている。サッカーのフィールドと違うところは、陣地内に障害物のように盛り土が用意してあって身を隠せるようになっているところだ。

 魔法大会について調べている時、僕はこの魔法大会は最初は雪合戦のような競技をイメージしていたのではないかという印象を持っていた。それにサッカーかハンドボールのようなルールが魔合体している。


 大会に出場するのは僕らのチームを含めて八チームとなった。ほとんどのチームが五人でチームを組んでいるようだ。一年生が、しかもたった二人で参加というのは他のチームからは相当奇異の目で見られているのを感じる。


「アスラー! 頑張れー!」

「アスラ! 勝てよ!」

「ファーちゃんも!」


 観客席でステラたちが僕らに向けて声援をかけてくれた。それで僕は少しばかり緊張が和らいだ気がした。


「最初の対戦相手はきっと油断してるわ。一気に突き放しましょう。」

「そうだね、ファー。」


 僕は試合に集中した。ついに今までの練習が活きる時が来た!



 試合開始。

 まず、僕らはゴール前で自動防御魔法を発動する。そして次にファーが身体強化魔法を使う。その間に相手チームは中央に置かれていたボールを取って僕らの陣地のゴール目指して走ってくる。相手はボールを三秒以上持っていてはいけないのでバスケのドリブルのようにして向かってくる作戦のようだ。

 ファーが身体強化魔法をかけ終わり、ボールを持っていた相手の選手に向かっていく。僕は次に連射追尾魔法でドッドッドッと攻撃魔法を撃つ。攻撃魔法で狙われた相手の選手は立ち止まり防御魔法でそれを受けた。防御魔法をかけているのは……他の選手だ。僕はそちらにも連射追尾魔法を撃つ。ボールは選手の足下に置かれている。ボールを守っている選手の防御魔法が弱まり、ファーがボールを奪うために網魔法を使う。他の選手たちが自陣からファーに攻撃魔法を撃つがそれはすべて自動防御魔法で防がれる。ファーの網魔法がボールに届く瞬間、ボールを持っていた選手は魔法でボールを僕らのゴールに向けて打ち出した! 僕はラケット魔法で飛んでくるボールを狙う。ラケットはゴールの半分くらいの大きさになるが、重さは普通のテニスのラケットくらいになるように調整している。僕はボールがファーの方向に飛ぶように打ち返した。


「ファー! チャンスだ!」


 ファーはボールを網魔法で捕まえると、相手の陣地のゴールへ向けて走る。身体強化魔法のおかげですごいスピードだ。相手チームの攻撃魔法はファーに当たらない。僕も連射追尾魔法でファーを援護する。ゴール前にいた相手チームの選手の動きを僕は連射追尾魔法を撃って止める。三秒! ルールギリギリのところでファーが投射魔法でボールをゴールに打った!


「よし!」


 ボールはありえないような回転をして相手の選手の脇をくぐり抜け、確実にゴールを捉えてポイントが入った!

 ゴールに入ったボールは、審判魔法によってまた場内の中央に置かれる。ファーが相手チームよりも速くあっという間に戻ってきてボールを攫うとまたゴールを狙う。ファーは体育の成績も良いのだ。僕はまた連射追尾魔法でファーの援護に徹する。

 はっきり言って相手チームの動きは鈍い! 僕とファーの動きに付いてこれていないし、ボールをコントロールする魔法は杖に入れていないみたいだ。相手チームが繰り出す妨害のための魔法は僕らにはほとんど通用しない!

 こうして僕とファーのチームは一回戦で相手に何もさせずに合計で十ポイントを獲得し快勝した。


「やったね、ファー!」

「そうね! いけるわ!」


 僕とファーはハイタッチして喜びを分かち合った。


「でもこれで私たちの手の内はバレたから、次の試合の相手はどう出てくるかわからないわ。」

「そうだね。気を引き締めないと。」


 次の対戦相手は……ダンクのいるチームだった。勝ち上がったのか、一回戦を。


 いや、ダンクたちのチームは意外にも堅実な方法で勝っていた。ダンクたちのチームの戦術はボールを足で蹴って複数人でサッカーのようにゴールを狙うというものだった。攻撃魔法はあまり撃たない。特にチームリーダーの三年生女子のシュートには魔法がかかっていて、相手チームの目を掻い潜り確実にゴールに入るようだ。正攻法で得点を狙うというのは僕らの作戦と同じだ。


「案外、強敵かもしれないわね。」


 ファーが真剣な顔でそう言った。

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