新学期が来る
僕は魔法恐怖症を克服するため、大会用の攻撃魔法の分析をした。
魔法陣から読み取れること、大会用の攻撃魔法は風と水の魔法の複合体だった。風の魔法を水の魔法の膜で包む。そしてこれは公平性を期すためだと思うが威力と大きさまで魔法陣の中に規定されるように作られている。これならば当たっても絶対に怪我はしないとわかる。
だいたい理解はできた。あとはこの魔法を当てられることに慣れてしまえばどうってことはないはずだ。僕はファーにあえて顔面に当ててもらうように頼んだ。ファーは
「本当にやるの?」
なんて言って躊躇してたけど、これはあんな夢を見てしまった僕自身へのけじめでもある。ファーの裸の夢を見たことはファーには言えないけど。
ファーの攻撃魔法が僕の顔に当たる。痛い。バシンッと音がして、ジーンと顔に痛みが広がる。それでもゴムボールが顔に当たった程度の痛みだ。
「や、やっぱり、これはやめた方がいいんじゃ……。」
「いや、大丈夫! もっと撃って!」
「うう。なんかこれじゃ私がアスラを虐めてるみたいじゃない?」
「僕は痛みに強いから平気だよ! もっと! もっと!」
「それじゃ……本気で行くわよ!?」
ファーのおかげで僕の体は全身アザだらけになったけど、僕は大会用の攻撃魔法を克服した。もう顔面に当てられても目を瞑ることもないくらいだ。
「ありがとう、ファーのおかげだ。」
「……なんかアスラ、痛めつけられて喜んでないわよね?」
ファーが何を気にしてるのかわからないけど、これで魔法大会は問題ない。よし、練習再開だ!
そして夏休みはあっという間に過ぎ去っていったのだった。
新学期、すぐに僕とファーは魔法大会の出場にエントリーして、そのことはクラス中に瞬く間に広まっていた。
「アスラくん、頑張ってね!」
魔法実習で同じ班になっている女子も応援してくれた。たまにお菓子をくれる女の子だ。
他にも様々な反応があったがみんな好意的だった。ただ一人を除いて。
「竜議員の息子、家無し。お前らも魔法大会に出るつもりなのか。やめとけ、優勝は無理だぜ。俺も出るんだからな!」
「ダンク……!」
予想はしていたが、ダンクも魔法大会に出るつもりらしい。誰と組んでチームを作るつもりなのかと思ったら、どうやら三年生にダンクのお姉さんがいて、そのチームに入れてもらったということだった。
「はははは! 決勝で会おう!」
ダンクは自信満々でそう言うと去っていった。ダンクに負けるわけがないと思ったが、三年生と同じチームということは要注意かもしれないと思った。魔法大会は高度な魔法を使える方が有利だからだ。おそらくダンクも三年生に魔法を借りるに違いない。
僕とファーは、魔法大会で使う魔法の最終確認をした。
作戦一、ボールでポイントを取られないためにゴールは僕が守る。
作戦二、相手がゴールを狙ってきたら僕は攻撃魔法で反撃する。
作戦三、ファーはボールを奪うように動く。奪ったらゴールを狙う。
自動防御魔法のおかげで攻撃魔法を受けての失点は無い。あとはどうやってポイントを取るかということだ。
ゴールを守る僕は、基本の攻撃魔法と、自動防御魔法に、攻撃魔法の連射追尾魔法化、ゴールを守るためのボールを打ち返す大きなラケットのような魔法、それと隠し技として十秒限定地形変化を杖に入れることになった。ファーは、基本の攻撃魔法と、自動防御魔法に、動き回るための身体強化魔法、ボールを奪うための網魔法、ボールを確実にゴールに投げる投射魔法を杖に入れる。試合開始後に自身にかける魔法が多いので先手必勝というわけにはいかないし、隙ができてしまうので出来るだけ魔法発動が短くなるように調整している。
「正直相手がどんな魔法で来るかはわからないから臨機応変に行くしかないわ。」
大会直前まで僕とファーはボールを打ち返したり、キャッチしたり、ゴールに投げ入れたりする練習を繰り返した。授業が始まる前の早朝練習に放課後も暗くなるまで練習した。なんか運動部みたいだと僕は思った。そういえば賢斗はサッカー部だった。
そしてついに魔法大会の日がやってきたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます